57: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:20:03.68 ID:nY0iWbpOO
「きゃー! 美穂の足元にフナムシの行進!」
「きゃあ!?」
可愛らしい悲鳴と共に美穂が転がるように木の裏から出て来た。水着で。
58: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:21:57.58 ID:nY0iWbpOO
「いや、つーかなんで水着あんのさ」
「早起きして外見たら絶好の海日和になってたから、寮のみんなを起こして亜季さんの運転でモールまで水着買いに行きましたとさ」
なら起こしてくれてもよかったんじゃないか? 俺ずっと夏草の中で寝てたんだぞ。
59: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:22:26.32 ID:nY0iWbpOO
「ショッピングモールに売ってありました! 実は私、テレビで見た素潜りでの銛突きに憧れていたのです」
恐らくとったどー! ってフレーズでお馴染みのアレだろう。
「しかし都会の海は濁っていて海の中の魚ははっきり見えず、銛突きには不向きでした。しかし、ご覧ください! この透き通るような海の青! まるで沖縄の海をそのまま持ってきたみたいではありませんか!」
60: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:23:08.30 ID:nY0iWbpOO
「ここって朝来たんじゃなかったの?」
肇が行きたがっていた場所はショッピングモールだった。でも朝美穂以外のみんなは亜季の運転で水着を買いにきたはずだけど……。
「……その、あまり他の人に聞かれたくないと言いますか……私もできることなら信じたいんですが」
61: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:23:45.07 ID:nY0iWbpOO
「それともう一つ。思い出したのはついさっきなんですけど……最近山紫水明で活動してた時、芳乃さんが言っていたんです。何か良からぬ気が近づいていると」
「良からぬ気……? いきなりオカルトな話になってきたな」
いや、今俺たちがいる状況がオカルトそのものなんですけどね。
62: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:24:20.58 ID:nY0iWbpOO
肇は優しい子だ。いや、彼女だけじゃない。うちの事務所のアイドルはみんな個性的でクセがあって中には尖に尖った子もいるけど、シンデレラの冠がつくように心優しい子ばかりだ。だからこそ、そんな優しい子の中に人を石にして時間と空間をも自在に弄ぶ悪魔が紛れているなんて考えたくもなかっただろうに。
「よく言ってくれたね肇。ありがとう、俺も気を付けておくよ。さてと、何も買ってこないんじゃみんなに怪しまれるな」
どうせなら楽しいものを買って帰ろう。夏、楽しいもの楽しいもの……。
63: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:25:02.91 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん、肇ちゃん! どこ行っていたんですか」
「いや、悪い悪い。せっかくの夏なんだし、これ買っとかなきゃと思ってね」
「花火だー!」
64: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:25:48.32 ID:nY0iWbpOO
「しかし寮の中にバーベキューセットがあったとはね」
「前に女子寮のみんなでバーベキューパーティーをやったんです。その時買ったんですよ」
海で遊び倒して空かしたお腹を満たすなら、やはりバーベキューだろう。肉を焦がす香ばしい匂いとジュージューと焼ける音はここにいる全員に等しく食欲を配っていく。
65: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:14:22.83 ID:nY0iWbpOO
「五十嵐家特製のバーベキューソースですっ! プロデューサーさんも使いませんか?」
「特製? 普通のと何が違うんだろう」
フンスと鼻息は大きく自信ありげな様子だ。さて如何な物かと肉につけて口に入れる。
66: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:14:54.38 ID:nY0iWbpOO
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
市販の打ち上げ花火だから星空まで高く咲くわけじゃないけど、やっぱり轟音と共に花火が広がる音はいくつになってもテンションが上がる。周りに誰もいないのをいいことに俺たちは夜遅くまで花火に興じた。近所迷惑だー! と怒鳴り込んでくる人がいたらいたで俺たちにとっては朗報だし、そういった意味もあって娯楽とサバイバルを兼ねているのだ。
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