62: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:24:20.58 ID:nY0iWbpOO
肇は優しい子だ。いや、彼女だけじゃない。うちの事務所のアイドルはみんな個性的でクセがあって中には尖に尖った子もいるけど、シンデレラの冠がつくように心優しい子ばかりだ。だからこそ、そんな優しい子の中に人を石にして時間と空間をも自在に弄ぶ悪魔が紛れているなんて考えたくもなかっただろうに。
「よく言ってくれたね肇。ありがとう、俺も気を付けておくよ。さてと、何も買ってこないんじゃみんなに怪しまれるな」
どうせなら楽しいものを買って帰ろう。夏、楽しいもの楽しいもの……。
「そうだ、花火でも買って帰ろうかな。肇も欲しいものがあれば言ってごらん」
「えっと、それじゃあ……――はダメでしょうか?」
「うん? ダメじゃないけど、何に使うんだろ?」
肇と一旦別れて車で待ち合わせをする。どこから仕入れたのか花火コーナーが作られており、過ぎゆく夏をいくつもの火花で彩ってくれと言わんばかりだ。何袋か買って車に戻るが肇はまだ戻っていないようだ。これまたどこから補充されてるのかわからない自販機から炭酸ジュースを取り出して喉を潤す。喉で弾ける黒いソーダ水は星をも隠す夜空のようだ。
「すみません、お待たせしました」
「いや、俺もさっき戻ったとこだから。ジュース飲むかい?」
「良いんですか? ではお茶を」
緑茶を取り出して肇に渡す。お茶を持っていない方の手には何やら文具屋の名前が書かれた袋が。なんだろう、陶芸に必要なのかな。
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