60: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:23:08.30 ID:nY0iWbpOO
「ここって朝来たんじゃなかったの?」
肇が行きたがっていた場所はショッピングモールだった。でも朝美穂以外のみんなは亜季の運転で水着を買いにきたはずだけど……。
「……その、あまり他の人に聞かれたくないと言いますか……私もできることなら信じたいんですが」
「肇?」
キョロキョロと周囲を警戒して真剣な眼差しで俺を見据える。
「昨日の夜ですが……寝る前に芳乃さんの部屋に入ったんです。石のままですけど、部屋くらいは綺麗にしてあげようと思って。掃除したんですけど、なかったんです」
「なかったって?」
「法螺貝です」
法螺貝といえば芳乃のトレードマークだ。初めて彼女を事務所で見た時、和装の小さな女の子がぶおおおおおお! とブブゼラみたく響かせてたもんだからびっくりして蒲田行進曲よろしく階段から転がり落ちたのも今じゃいい思い出だ。
「あの法螺貝ってお婆様から受け継いだ特別な法螺貝みたいで、いつも肌身離さず持っていたのですが」
「ちょっと待った。確かに芳乃の部屋で石像を見つけた時……そうだ、法螺貝なんてなかったぞ」
つまりあの石像は単純に芳乃を基にしただけで本物の芳乃は別のところにいるのか? それとも……。
「誰かが持ち去った、か」
「そう考えてるんだな」
「はい。あの石像は芳乃さんです。プロデューサーさんも聞こえませんでしたか? 時々、誰もいないはずなのに声が聞こえるんです」
やっぱり、あれは幻聴じゃなかったのか?
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