71:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:34:19.62 ID:QXbKSZYO0
「ニェット、チヨ」
声が聞こえた方を振り向くと、いつも優しく微笑んでいるアーニャさんが、険しい顔をして私を見つめていた。
「プロデューサーもアーニャも、チヨに言ってほしいです。
72:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:35:39.04 ID:QXbKSZYO0
決して折れない定規を背中に刺したまま、ソイツはその姿勢そのままの真っ直ぐな目で私を見つめ続ける。
「ですが、私はあなたの主体性に期待したいと考えました。
図々しいお願いであることは承知しておりますが、能動的な一歩を踏み出していただきたい。
自分から投げ出すことで得られるものを、その目で見てほしいのです。
73:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:37:20.88 ID:QXbKSZYO0
「チヨ……!」
随分と面倒なことになった。だが、四の五の言ってもいられない。
幸いにして――と言うのが正しいかは分からないが――私はアーニャさんにせがまれ、『Memories』の振付を戯れで模倣したことはある。
74:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:39:10.04 ID:QXbKSZYO0
元々、私のソロ曲は用意されていなかった。
お嬢様を差し置いて、一人で先を行くことを良しとしなかった私が、アイツにそう要求したためだ。
故に、与えられる仕事は、ほとんどがグラビアと呼ばれるビジュアル重視の内容がほとんどだった。
ステージに立ったことも何度かあったが、どれも他の誰かのバックダンサーとしてのもの。
75:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:41:48.58 ID:QXbKSZYO0
開演を30分後に控え、スタッフ用の通用廊下に掲示されたセットリストをもう一度確認する。
●MC(前川みく・多田李衣菜)
M17 「LEGNE -仇なす剣 光の旋律-」Rosenburg Engel(神崎蘭子)
M18 「できたてEvo! Revo! Generation!」new generations(本田未央・島村卯月・渋谷凛)
76:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:43:22.12 ID:QXbKSZYO0
「ヒツヨウもスジアイも、無いと考えていマス」
私の言葉をオウム返しに、それも何故かしかめ面をしながら冗談めかして未央さんは言った。
77:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:45:23.81 ID:QXbKSZYO0
――――。
「あ、ありがとうございましたぁ!」
「たぶん電車混むから、今日は早めに帰った方が良いよ」
78:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:47:31.48 ID:QXbKSZYO0
おそらく、美波さんの様子を見に行っているのだろうと推察された。
私が懸念しているのは、美波さんの容態でもあり、彼女の本来のパートナーであるアーニャさんが、ステージに集中できないのではないかということだ。
それだけだ――そ、それだけ――。
79:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:49:13.21 ID:QXbKSZYO0
そう、今日はお嬢様だけでなく、黒埼のおじさまがわざわざ会場へ来てくれることになっている。
従者として、粗末なものは見せられない。
「黒埼家の、じゅ、従者として……私は、果たすべき……!」
「それよりも、白雪さん」
80:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:51:03.44 ID:QXbKSZYO0
「イェーイ、みんなーありがとーー!!」
「この後もぉ、すーっごく可愛ぃ子たちがたくさん登場するから、楽しんでってにぃ☆」
「みりあ達もまたあとで出てくるからねー!」
いつの間にか、凸レーションの出番が終わったらしい。
81:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:53:14.52 ID:QXbKSZYO0
出番が訪れ、意を決してアーニャさんと二人、ステージに立つ。
美波さんが急遽リタイヤしてしまった旨は、既に冒頭でアナウンスされている。
彼女の出番を期待してきた観客は、代わりにやってきた私を見てさぞガッカリすることだろう。
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