白雪千夜「足りすぎている」
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76:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:43:22.12 ID:QXbKSZYO0
「ヒツヨウもスジアイも、無いと考えていマス」


 私の言葉をオウム返しに、それも何故かしかめ面をしながら冗談めかして未央さんは言った。

「そんな事言ってぇ〜。知らないぞ〜、私もそうだったけど初ステージってすっごく緊張するんだから!」
「今からそんなプレッシャーかけてどうすんの、まったく……千夜、気にしないでいいからね」
「千夜ちゃん、人を! 人を手のひらに書いて飲み込むといいですよ!」


 三者三様でありながら、この人達に共通して言えることは善意だ。
 代役とはいえ、初の舞台に立つ私を気に掛けてくれている。

「ありがとうございます」

 素直な言葉が自分の口から出たことに、ふと驚いた。

 軽くあしらおうとして発したものではない。
 彼女達にどう受けとめられたかは分からないが、私にしては、確かな湿り気のある言葉だ。


 少し、心臓の鼓動が早くなっている。
 アーニャさんともう一度確認をしておきたくなり、私は三人に断りを入れて踵を返した。



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