167:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:46:13.55 ID:1/ZkFkMM0
「し、失礼します!」
「ひぁっ、し、白雪さんちょっと!?」
引っかけた靴を履き直す時間すらもどかしい。
お嬢様の部屋の片付けも、ドアの鍵も、まるで無視してしまうほどに、私は頭が真っ白のまま寮の出入口へと走った。
168:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:50:20.52 ID:1/ZkFkMM0
寮を飛び出し、その先の門へ向かう足が止まった。
見慣れた黒い定規が――アイツが、門の前に立っている。
「白雪さん、お待ちしていました。どうぞこちらへ」
169:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:54:23.39 ID:1/ZkFkMM0
都心部から黒埼の屋敷へは、車で1時間半ほどかかる。
幹線道路を使えば、近くまでは比較的一本道で行けるが、その先は細い山道を慎重に上る必要がある。
346プロの寮に越してからも、お嬢様と二人でタクシーを利用して帰ることは何度かあったが、どの運転手もその道を嫌がっていた。
車の中は、しばらく無言だった。
170:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:57:18.10 ID:1/ZkFkMM0
「レッスンのことであれば、気に病む必要はありません」
嫌味も抑揚もまったく感じられないトーンのまま、コイツは続ける。
「もちろん、望ましいことではありませんが……
171:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:59:33.38 ID:1/ZkFkMM0
「知った風なことを」
私は小さくため息をついて窓の外へ顔を背けた。
「お前は、私がどれほどお嬢様のことを案じているか、分かっていないのです」
172:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:03:14.33 ID:1/ZkFkMM0
いつの間にか凝視していた私の視線に、チラッと送ってきたコイツの視線が一瞬だけ絡んだ。
「私だけでなく、シンデレラプロジェクトの皆も、よく分かっています。
白雪さんが黒埼さんの事を、とても大切に思われていることを」
173:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:06:42.70 ID:1/ZkFkMM0
「……えっ!?」
なぜ!?
お嬢様ご自身の誕生日だ。お祝いされる側がホストに徹するのはおかしい。
というより、私やアーニャさんだけでなく、一緒に向かっているコイツの分もか!?
174:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:08:23.56 ID:1/ZkFkMM0
すっかり見慣れた門が自動で開き、ゆったりと開けた車寄せにコイツの運転する車が滑らかに吸い込まれていく。
「今日はどうか、黒埼さんのお話に、耳を傾けてあげてください」
175:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:14:00.18 ID:1/ZkFkMM0
ゆっくり話をする間もなく、お嬢様は「準備があるから」と、私達をリビングに案内した後、そそくさと台所へ引っ込んでしまった。
意味ありげにアーニャさんやアイツと目配せをしていた辺り、この場にいる人達は、おじさまも含め、予め今日のことを了解していたように見える。
皆が申し合わせていたのは、ひょっとして私のことだったのではないか――そのような考えは、果たして飛躍だろうか。
176:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:16:15.42 ID:1/ZkFkMM0
お嬢様は、そこまで私のことを――。
今日、どんな顔をしてお嬢様とこれから話をするべきか気を揉む私を尻目に、コイツは首を振った。
「他社さんと協働で開催するフェスの場合は、ライブバトルと称し、観客の方々からの投票形式によって、その出来を競い合うこともあります。
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