白雪千夜「足りすぎている」
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170:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:57:18.10 ID:1/ZkFkMM0
「レッスンのことであれば、気に病む必要はありません」

 嫌味も抑揚もまったく感じられないトーンのまま、コイツは続ける。

「もちろん、望ましいことではありませんが……
 調子が悪かったり、気分が沈んでしまったりすることは、誰しもあることです。それにより、つまずいてしまうことも。
 ナーバスになってしまったとしても、どうか大目に見てほしいと、今日、双葉さんもそう仰っていました」

「いつも自堕落なあの人が言っても、説得力がありません」
「いえ」

 短い、しかしハッキリとした否定が聞こえて、思わず隣を振り向く。


「双葉さんが大目に見てほしいと仰ったのは、あなたのことです、白雪さん」


「……私を?」

 双葉さんの、去り際の後ろ姿が脳裏に蘇る。
 素っ気ない様子で大きな欠伸を掻きながら、面倒くさそうにカフェの出口へ向かう背中――。

「先ほど、寮を飛び出してきた白雪さんを見て、その意味が分かった気がします」



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