169:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 16:54:23.39 ID:1/ZkFkMM0
都心部から黒埼の屋敷へは、車で1時間半ほどかかる。
幹線道路を使えば、近くまでは比較的一本道で行けるが、その先は細い山道を慎重に上る必要がある。
346プロの寮に越してからも、お嬢様と二人でタクシーを利用して帰ることは何度かあったが、どの運転手もその道を嫌がっていた。
車の中は、しばらく無言だった。
後部座席にいるアーニャさんは、いつもはこういう時に色々な話題を振ってくれるのに、今日は何も言わない。
どんな様子で座っているのか、後ろを振り返ってみたい気持ちを、先日穏やかでない言葉をぶつけてしまった後ろめたさが邪魔をする。
後ろめたいといえば、コイツだ――。
コイツも、岩のようにデカい手でハンドルを握り、黙って前を見つめている。
ついに、私は根負けした。
「何も、言わないのですか……」
今日のレッスンをすっぽかした私に、言いたいことが無いはずは無い。
私に、そんな筋合いが無いのは分かっているのに――自分の気持ちを隠しているコイツに、イライラしてしまう。
そんな手前勝手な自分自身にも――。
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