【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:43:53.38 ID:oj63shz20
夏葉が目を覚ましたのは、それから二時間後のことだった。
彼女は自然と目を覚まし、寝惚けまなこをこすりながら周囲を見渡した。俺を除いて、既に事務所には誰もいない。お祝いの料理なども一通り片付いていた。
「智代子を連れて、樹里と凛世は寮に戻った。果穂は、はづきさんが車で家まで送ってる」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:44:23.90 ID:oj63shz20
夏葉は自分の立ち振る舞いを大切にしている人間だ。常に周囲に遠慮しているという意味ではない。夏葉はどんな時も善く在ろうとする心がけを持っている。だから、酔いつぶれたところなど見たことがなかった。
とはいえ、夏葉も完璧な人間じゃない。そんな人間はどこにもいない。彼女が疲れ果てて眠っている姿など、これまで何度も目にしてきている。
つまり知りたいのは理由だ。浮かれた気分だった、それで酒がすすんだ。それも間違いではないだろう。だがそれだけではないと、今日までの経験がささやいていた。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:44:49.16 ID:oj63shz20
その時、俺はどんな顔をしていたのだろうか。怯えた表情を浮かべていたのだろうか。夏葉は俺の顔を覗き込んで、励ますように微笑み、断言した。
「私は今が幸せよ」
虚ろ気な雰囲気とは逆に、力強い口調だった。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:45:19.53 ID:oj63shz20
「取ってきたぞ」
戻ってアルバムを夏葉に手渡し、スタンプケースはソファ前の机のはじに置いておく。夏葉は短く礼を言って、半身分ほどソファの右側に体をずらした。人間ひとりが余裕を持て座れるスペースが空いた。
アルバムが机の上に広げて置かれる。隣り合って座っているので、向ける方向に苦慮しなくて済んだのはありがたかった。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:45:49.11 ID:oj63shz20
「私にとっては素晴らしい日でも、誰かにとってはそうじゃない。それはわかっていたわ。当たり前のことだもの。だけど、その誰かがアナタだと思うと、なぜか悔しくて、哀しくなって……そう感じてしまった理由を考えると、もっとわからなくなってきて……」
とうとうと夏葉が語る。語り口に合わせて、次第に彼女の目の焦点が合わなくなってきていた。
「……それで、考えがまとまらなくなって……寂しくなって……」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:46:24.33 ID:oj63shz20
「俺は……」
口ごもってしまった。言おうとした言葉を止めたせいか、他に何を言うべきなのかわからなくなっていた。自分が今、幸せなのかどうかも分からない。不幸ではないという後ろ向きな確信だけがある。
思考は相変わらず胡乱なままで、だから、俺は思ったままに行動することにした。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:46:55.79 ID:oj63shz20
「どこに押せばいい?」
「アナタと同じでいいわ」
「わかった。それじゃあ、目をつぶってくれ」
「ええ」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:47:47.37 ID:oj63shz20
「い、いや……今のは……」
喜ばれるはずがない。
そう思って誤魔化そうとしたのに。
誤魔化すより先に、夏葉がにこりと笑った。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:48:50.47 ID:oj63shz20
◇
――二年前、俺は夏葉から何かを得た。
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:49:25.29 ID:oj63shz20
俺の意識は二年前の記憶から立ち返り、現実の黒い海の砂浜に戻ってきていた。
……ふと、風が吹いた。
突風だった。急な陸風だ。俺はぐらつき、言葉を噛み締めるように目を閉じていた夏葉もまた、その風に対応できなかった。夏葉の白い中折れ帽子が風にさらわれ宙を舞う。数秒ほど滞空して、帽子は海に落ちた。
以下略
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