【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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45: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:46:55.79 ID:oj63shz20
「どこに押せばいい?」
「アナタと同じでいいわ」
「わかった。それじゃあ、目をつぶってくれ」
「ええ」

 夏葉が目をつぶり、俺は息をのんだ。
 久しぶりに間近で見た彼女の顔は美しかった。改めてそのことを実感した。整った顔立ち、きめ細やかな肌、手入れの行き届いた毛髪。自分とはまるで違う。こんなものを押してしまっていいのかと、躊躇さえ覚える。

 それでも、最初に思ったようにしようと決めた。
 息を止める。これ以上、手が震えてしまわないように。そして彼女の右頬に触れる。道具越しのはずなのに、その柔らかさが伝わってくるような気がした。触れた肌はふわりと沈んで、元に戻る。

「……どう?」

 薄目を開けて、夏葉が問うた。うまく押せたかどうかの確認だ。それは読み取れていた。
 文字のかすれはない。インクのムラもない。紅いインクと赤みを帯びた肌色のグラデーションがいまひとつで、境界が曖昧になっているのが気になるくらいだ。

 だから、特に失敗がないことを伝えようとして、それなのに、出てきたのは違うセリフだった。

「よく似合ってる」

 夏葉の顔に浮かぶ『よくがんばりました』がきらりと光った。
 そんなふうに見えたから、そう言ってしまった。

「……え……」

「あ……」
 すぐに後悔した。

 顔がかあっと熱くなる。客観的に見れば似合っているはずがない。彫刻のように大人びた顔立ちに、学童が喜ぶような紅い文字。ミスマッチもいいところだ。服装だってそう。白のカジュアルドレスに、ダイヤを数珠に繋げたネックレス。それらに対して『たいへんよくできました』だ。やはり噛み合うはずもない。

 酔いが一息に覚めていくのを感じた。自身の無軌道な行動に嫌気がさした。俺は何がしたかったのか。『よくがんばりました』を押し合ったのは単なるお遊びだ。間違っても「似合ってる」なんて言うものじゃない。それは……『たいへんよくできました』ではないのだから。



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