【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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42: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:45:19.53 ID:oj63shz20
「取ってきたぞ」

 戻ってアルバムを夏葉に手渡し、スタンプケースはソファ前の机のはじに置いておく。夏葉は短く礼を言って、半身分ほどソファの右側に体をずらした。人間ひとりが余裕を持て座れるスペースが空いた。

 アルバムが机の上に広げて置かれる。隣り合って座っているので、向ける方向に苦慮しなくて済んだのはありがたかった。

「プロデューサー、この写真なんだけど」
「俺が入社した時の写真だな。智代子の言う通り、死んだ魚の目をしてる」
「それの……ここよ」

 夏葉が同封された長方形の色紙を指差した。日付の記されたメモだ。夏葉たちと出会う約半年前の日付が入っている。

「この日、私は私が何をしていたのかを、よく覚えているわ。その時の空気と熱量まで、目を閉じればくっきりと思い出せる」
 夏葉は日付の入ったメモ用紙を、ファイルの透明膜の上から愛おしそう指先でなぞった。

「私は生まれて初めて、ライブというものに行ったの」
「……夏葉、それって」
「この日は、私のアイドルとしての始まりの日なのよ」

 アイドルを目指したきっかけ。夏葉のそれを、俺は断片的に聞いていた。
 当時、夏葉は何も知らないまま、なんとなくアイドルというもの軽視していた。それが友人に誘われて行ったライブで百八十度回転した。そのスケール感に圧倒されて、自身もアイドルを目指したのだと、そう聞いている。

「あの日、私は私自身に期待をしたの。『私なら大きなことを成せる』って、そう思ったの。そしたら、世界がもっと明るく光って見えた。でも……」

 夏葉の指が、写真の中の俺に触れた。



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