【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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49: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:50:25.11 ID:oj63shz20

 ――こんな、こんな浅瀬がなんだ。

 ――俺達は太平洋だって越えられたんだぞ。

以下略 AAS



50: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:50:59.98 ID:oj63shz20
「……っ!」
 今度こそ足がとられた。体のバランスが崩れて前につんのめる。顔が海水をなめた。

「プロデューサー!」
 夏葉が叫ぶ。
以下略 AAS



51: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:51:29.57 ID:oj63shz20
 岸に戻る。進むときにと比べて随分と楽に感じた。まだ引き波より寄せ波のほうが強い時間帯だ。波に逆らわずに動くだけでいい。

 辛いのは眼だった。顔に着いた海水と髪に跳ねた海水が滴ってきて、目に染み込もうとする。痛みで薄目を開けるのがせいぜいだった。

 それでも夏葉の場所はわかる。彼女の目の前に行き、帽子を手渡した。
以下略 AAS



52: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:51:58.21 ID:oj63shz20
 伝えたい想いは伝えられた。告げて、俺は夏葉の横を通り過ぎる。
 着替えを取りに車に戻ろうと思っていた。だけどそこで、もうひとつ言っておかなければいけないことがあるのを思い出した。

「婚約の、ことだけどさ」
 少しだけ声が震えた。
以下略 AAS



53: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:52:33.96 ID:oj63shz20
「待って」

 足を止める。ようやく目を開けられた。夏葉が海に入り、くるぶしまでを水にひたしていた。夏葉は屈んで海の中から何かを拾い上げる。
 俺の靴だ。波にもまれて戻ってきたらしい。それを受け取るために夏葉の方に歩き出す。

以下略 AAS



54: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:53:09.95 ID:oj63shz20

 ……胸が、詰まる。

 夏葉のその言葉と同時に、丁度よく風が吹き抜けたりはしなかった。高台の上から教会から鐘の音が聞こえたりもしない。そんなものがなくとも、俺には十分に特別に思えた。

以下略 AAS



55: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:53:35.82 ID:oj63shz20
 それからどのくらい語らっていたのだろう。気がつけば水平線に陽が沈もうとしていた。

「そろそろ行きましょうか。色々と決めないといけないわよね。住むところとか、結婚式場のことだとか……できればあの教会がいいのだけれど」
 
 夏葉は高台を見上げると踵を返し、砂浜をふらつくことなく歩いていく。ダークサーモンの髪が、海風になびいて揺れた。そこで俺は、夏葉の海に来るたび、最後には同じ光景を見ていることに思い至った。海に向かって「私は有栖川夏葉」と海に叫んだ、かつての夏葉の姿が脳裏をかすめる。
以下略 AAS



56: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:54:21.60 ID:oj63shz20
 時は巡る。

「ブ、ブライダルフェアって、こんなにやってるのか!?」
「都内だけでも式場はたくさんあるもの。第一候補はあの場所としても、色々見て回って損はないはずよ」

以下略 AAS



57: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:54:57.39 ID:oj63shz20
 ――たぷりと、水の溢れる音がした。

 ブライダルフェアに向かう途中の道、男は水音に立ち止まった。不可思議だった。あたりを見回しても大きな水場はない。あるのは焼けたコンクリート道路と、子供が遊びまわっている公園だけだ。男は首をひねる。

 男の数歩先を歩く女性が振り向いた。男の妻となる女性だ。楽し気に「置いて行っちゃうわよ」とはしゃぐ女性に、男は右手をあげて応える。そして歩き出した。
以下略 AAS



58: ◆/rHuADhITI[sage saga]
2019/08/18(日) 02:56:01.69 ID:oj63shz20

終わりです。お目汚し失礼しました。
二日遅れとなりましたが夏葉さん誕生日おめでとうございます


59:名無しNIPPER[sage]
2019/08/18(日) 03:59:37.59 ID:4OdXFmUzo
うーん最高



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