【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
1- 20
53: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:52:33.96 ID:oj63shz20
「待って」

 足を止める。ようやく目を開けられた。夏葉が海に入り、くるぶしまでを水にひたしていた。夏葉は屈んで海の中から何かを拾い上げる。
 俺の靴だ。波にもまれて戻ってきたらしい。それを受け取るために夏葉の方に歩き出す。

「海って、こんなに冷たかったのね」
「わざわざ拾ってもらって悪いな」
「いいえ、いいのよ。気持ちいい冷たさだから」

 夏葉の目の前まで近づいて、その靴を受け取った。夏葉は優しく微笑んでいた。

「ねえ、プロデューサー」
 夏葉がいつものように俺を呼ぶ。

「……私と結婚してくれる?」

 それは不意打ちだった。情けないことに、俺は呆然として何の反応も示せなかった。

「違うわね。ごめんなさい、やり直させてちょうだい」

 その夏葉の笑顔を、俺はどこかで見たことがあった。あの教会だ。記憶が溢れかえってきた。あの時の言葉がまたも再生されてくる。

『――結婚しなくても、きっと幸せでいられるわ。今だって、すごく幸せだもの』
『それでも、そうしたいって思うことがもしあるなら……』

 教会の彼女と目があった気がした。荘厳な礼拝堂の、木材と空気の匂いを錯覚する。

「ねえ、――」
 彼女が俺の名を呼んだ。下の名前、俺の本名だ。

『そうしたいって、思える人に出会えたら……』
『その時は、私……』

 夏葉が手を差し出す。

「どうか私と、結婚してくれませんか?」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
61Res/84.32 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice