【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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52: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:51:58.21 ID:oj63shz20
 伝えたい想いは伝えられた。告げて、俺は夏葉の横を通り過ぎる。
 着替えを取りに車に戻ろうと思っていた。だけどそこで、もうひとつ言っておかなければいけないことがあるのを思い出した。

「婚約の、ことだけどさ」
 少しだけ声が震えた。

「忘れてくれとは言わない。だけど、一時保留にしておいてくれ。まだ考えるべき時期じゃなかった」

 ……これでいい。結婚はしたい。夏葉のことを強く抱きしめていたいし、その唇を奪ってしまいたいと思っている。だけどそれは、俺にとって一番大切なことではなかった。

 とんだマッチポンプだな、と自嘲した。結婚を申し込んで夏葉の心を揺さぶった挙句、答えを示せず夏葉なら大丈夫と太鼓判を押しただけ。あの婚約暴発は、対極的に見れば余計な藪蛇以外の何物でもない。ちっとも『ちゃんと』してはいなかった。

 でも、その行為にわずかな救いがあるとすれば、あの行いが夏葉の弱った心に付け込もうとした何かではなくて、一人の人間が心に従った結果の、恥じても胸を張るべき失敗だったことだろう。

 俺は顔についた海水をぬぐった。その時、

 ――ちゃぷりと、水の音がした。



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