【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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50: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:50:59.98 ID:oj63shz20
「……っ!」
 今度こそ足がとられた。体のバランスが崩れて前につんのめる。顔が海水をなめた。

「プロデューサー!」
 夏葉が叫ぶ。

 すんでの所で転ぶのをこらえた。また一歩と足を前に出す。割くように水を手で掻き分ける。俺は止まらない。止まってなどやるものか。

 そして、感情の発露も止まってはくれなかった。俺の身体は高らかに声をあげる。

「夏葉ぁ……っ! 俺は……今が幸せだ……っ!」
 進む。帽子までもう2メートルもない。

「俺たちは叶えた! 夢を、叶えたんだっ! 夏葉はアイドルとして! 俺はプロデューサーとして! 最高のゴールを迎えられたっ! これで幸せじゃないはずがないだろっ!」
 帽子まで手が届く距離に入った。

「だけど……っ! だけどさぁ……っ!」

 懸命に手を伸ばす。

「俺は……っ! 夢が叶うまで九年間だって幸せだった! 夢が叶わなくても、途中で終わってしまっても、きっと俺は幸せだったっ! 夏葉がいてくれたから! 夏葉と一緒に同じ夢を目指せたからっ……!」

 手に、触れる。

「夏葉が……っ! 『これが幸せだよ』って……っ! 俺に笑いかけてくれたからっ……!」

 ――ああ、そうだ。
 ――夏葉が夏葉のまま笑っていてくれれば、俺はきっと幸せでいられる。

 俺は、夏葉の帽子を確かに掴み取った。


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