【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
↓
1-
覧
板
20
55
:
◆/rHuADhITI
[saga]
2019/08/18(日) 02:53:35.82 ID:oj63shz20
それからどのくらい語らっていたのだろう。気がつけば水平線に陽が沈もうとしていた。
「そろそろ行きましょうか。色々と決めないといけないわよね。住むところとか、結婚式場のことだとか……できればあの教会がいいのだけれど」
夏葉は高台を見上げると踵を返し、砂浜をふらつくことなく歩いていく。ダークサーモンの髪が、海風になびいて揺れた。そこで俺は、夏葉の海に来るたび、最後には同じ光景を見ていることに思い至った。海に向かって「私は有栖川夏葉」と海に叫んだ、かつての夏葉の姿が脳裏をかすめる。
「変わらないな。……本当に、変わらない」
「どうしたの? 何か言ったかしら?」
「いや、気にしないでくれ。当たり前のことだった」
「そう?」
急ぎ足で、よろめきながら追いつく。横に並ぶと夏葉は満足そうに眼を細めた。どちらが言葉にするでもなく、自然と手が触れあい、固く結ばれる。
「私は変わらないわ」
いつもの夏葉らしい、力強さと柔らかさが同居した口調だった。
さっきの独り言が、本当は聞こえていたのではないだろうかと思った。しかし、それで何が変わるということもない。同じことを感じられたというだけの、それだけの、ほんの些細で喜ばしいことだ。
「二十年、同じ生き方をして来たのだもの。今さら変われないし、変わろうとも思わない。それでいいの。……それでいいって、アナタのおかげでそう思えるのよ」
さっきから夏葉は感謝の言葉を並べ続けていた。俺は気恥ずかしくなって、答える代わりに彼女の手をさらに強く握った。少しでも力強さが伝わるように、しっかりと。
「ふふっ、ありがとう。私はこれからも幸せでいられるわ。幸せなままでいてくれ、って言ってくれる人が隣にいてくれるなら、それはきっと、絶対に。だって……」
そこで、夏葉が婚約を受け入れた理由が今になってわかった。俺は『』をしていたのだ。たったの漢字二文字。夏葉が時折口にする二文字の言葉を、俺は彼女にしていたのだ。
二人で最初に海を眺めた時も、ファン感謝祭の時も、それから幾度も幾度も、今までの長い道のりの中で、夏葉はその言葉を口にしていたはずだ。その言葉を聞くたびに、俺の心は温かくなる。
夏葉は笑って、そして、口にする。俺は耳をそばだてる。
「私、期待に応えるのは得意なのよ」
夏葉の未来と幸福を、俺は『期待』していたのだった。
<<前のレス[*]
|
次のレス[#]>>
61Res/84.32 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
書[5]
板[3]
1-[1]
l20
【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」 -SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1566062139/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice