嫉妬深い強欲デブでスケベで怒りに燃える怠け者の男「俺こそが唯一絶対の存在だ」
↓
1-
覧
板
20
6
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:42:52.33 ID:8MZ+TPk10
男は、バイク屋へと押し入り使えそうなパーツを片っ端から盗んだ。そして時間をかけて、一つ一つの部品を丁寧に交換し、再びセルを回す。深夜の住宅街に、ギュンギュンとセルモーターの金切り声が轟く。ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン……ドルンドルンドルンドドドドドド。息を吹き返した愛車に、男は狂喜乱舞し、まるでステップを刻むかのようにリズミカルにアクセルをひねり続けた。
その2日後、男は北海道にいた。その広大な大地を、俺の愛車で踏破してやる、そう息巻いた。しかし、美しい景色に心振るわせるのも初めのうちだけで、男はしばらくするとバイクを走らせることにすら飽いてしまったのだ。更に2日後には、男は自宅へと戻り、更にその翌日には何事もなかったかのように職場へと向かうのであった。
以下略
AAS
7
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:43:19.53 ID:8MZ+TPk10
?
その男は、色欲に溺れた。
以下略
AAS
8
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:43:46.99 ID:8MZ+TPk10
だが、かつての思い出も男の無限に沸き上がる猛りを抑え込むことはできなかった。その日も、男はアダルトコーナーへと赴き今晩の供となる円盤を物色していた。棚の前に、仁王立ちで陣取り、棚に並べられたDVDのタイトルをじっくりと眺める。しかし、長年通い続けてきたせいか、DVDのタイトルを見るだけで、男はその内容を完全に脳内で再生することができた。男は、まだ出会っていないDVDを求めて別の棚へと移る。だが、どういうことだろうか。男がいくら探そうと、男が見たことのないAVは見つからなかった。
それもそのはず。男は、既にその店に存在するすべてのAVを鑑賞しつくしてしまっていたのだ。男は、人目をはばからずにアダルトコーナーで声をあげて泣いた。本物の女だけでなく、AVまで俺を裏切って逝ってしまうのかと。男は、悲しみのあまり、他の店にAVを漁りに行くという通常の思考すらできなくなっていた。男の性欲は、AVの枯渇をきっかけに完全に決壊し、その全てが開け放たれた。男は、「俺だって本当は、AVなんかじゃなくて本物の女を抱きたいんだ」と店内に響き渡る声で泣き叫んだ。しかし、それに答える女性など居はしなかった。それどころか、老若男女を問わず泣きわめく男に寄り添うものは誰一人としていないであろう。
以下略
AAS
9
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:44:14.40 ID:8MZ+TPk10
?
その男は、嫉妬深かった。
最初の感染者は、南米の聞いたこともない国で見つかった。その感染者は、つい前日まで普段と変わらぬ生活を送っていたにもかかわらず、翌朝に自宅のベッドの中で冷たくなっているのを発見された。はじめは、単なる病死と思われていたが、その感染者に一切の病歴が無かったこと、また同時多発的に同様の死者が発見されたことで、その病気は世間に認知されることとなった。
以下略
AAS
10
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:44:43.86 ID:8MZ+TPk10
やがて、人々も研究者と同様に無駄なあがきをやめ、残された時間をより質の高いものにしようと考え、世界に人類史上初めて一切の争いのない穏やかな時間が流れることとなった。辛うじて機能していた各国政府は、ワクチン研究に託された膨大な予算を引き上げ、それらを広大な墓園の造成にまわし始めた。亡くなった感染者を放置することで、新たな病気が蔓延することを防ぐためだ。どうせ死ぬのなら、苦痛なく逝ける「眠り病」で。いつしか、人々は「眠り病」を救いとして受け入れるようになっていた。男の就職先も、そうやって作られた墓園の一つであった。
男は、隣人が死に、友と連絡がとれなくなり、家族をみとっていく中で、先に逝くことができた全ての人々をひどく羨むようになっていた。大事な人たちを失う度に襲い来る悲しみが、そうさせたのだ。どうして、俺はまだ生きているのだ。どうして「眠り」の救いは、俺の下にやって来ないのかと。後に残されるほど、男は仲間を失う悲しみに苦しみ、それに呼応するかのように死者達への嫉妬に狂っていくのだった。
11
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:45:10.76 ID:8MZ+TPk10
?
その男は、怒りに燃えていた。
世界は、その男一人を残して滅んでしまった。どういうわけだか、その男にだけ「眠り病」の救いは訪れなかったのだ。幸いなことに、急激な人口減少のせいもあり、ソーラーパーネルによって半永久的に稼働し続ける政府の冷凍庫にはありとあらゆる物資が、今なお大量に残っており、生きていくうえで男が困ることはなかった。しかし、男は世界でたった一人の生き残りとして余生を過ごすことになってしまった。
以下略
AAS
12
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:45:37.52 ID:8MZ+TPk10
残念なことに、男の目論見は大きく外れてしまった。カラオケボックスに設置されていた通信カラオケは、たとえ発電機から電気を回しても正常に稼働させることができなかったのだ。男は、店に残されたカラオケ機器の説明書を斜め読みにしてみたがよく理解することができなかった。わかったことと言えば、電気を通すだけでは通信カラオケは使えないということ程度だ。しかし、男は諦めなかった。男には、既に予備のプランがあったのだ。通信カラオケがダメなら、LDカラオケだ。
男の父は、とにかく新しいものが好きだった。まだパソコンが一般家庭に普及していないころに、何の用途も考えずパソコンを買って母に怒られたり、ベータや3DOといったメーカー戦争の敗北者たちも軒並み家の棚に揃えられていた。LDカラオケデッキも、そんな父の最新機器収集癖の遺産のひとつであった。近所の迷惑になると、当時はあまり使わなかったものだが、世界が滅びた今、誰に気兼ねすることない。問題があるとすれば、実家に置いてあるLDの収録曲は父の趣味の演歌ばかりであったということぐらいだった。
以下略
AAS
13
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:46:06.59 ID:8MZ+TPk10
?
その男は、ひどく傲慢であった。
以下略
AAS
14
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:46:33.55 ID:8MZ+TPk10
そして、男は考えた。俺は、この地球上の唯一絶対の存在として何をすべきかと。だが、答えがでるまで、そう時間はかからなかった。平家が滅んだ後の琵琶法師達の活躍をヒントに、男は、人類栄枯盛衰の伝道師となることを決意した。この先、誰に伝えることになるかはわからない。それでもなお男はそうせざるにはいられなかった。
男は次に、如何にして人類のあり様を伝えようかと悩んだ。何らかのメッセージ性が籠ったモニュメントの作成や、人類史の編纂、もしくは平家物語に倣って歌を歌いあげるか。様々な手法を考えては見るものの、世界で最も賢い男の知力をもってしても、それらを為すには困難であるように思われた。そうして、最終的に辿り着いた答えは、らしくしていこうというものであった。
以下略
AAS
15
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:47:00.47 ID:8MZ+TPk10
?
その日、男は定年を迎えるに至った。
男は、墓園に残されていた最後の墓に、名も知らぬ誰かの骨を納め、丁重に弔った。男の管理する墓園に、もはや空き室はなくなったのだ。男は、あまりの達成感にしばらく墓の前にうずくまり、声も出せずに静かに泣いた。
以下略
AAS
16
:
◆CItYBDS.l2
[saga]
2019/07/29(月) 23:47:27.85 ID:8MZ+TPk10
男は、最後の力を振り絞り穴を掘った。墓園の片隅にある男の姓が刻まれた墓、そう男の家族たちが眠るの墓の前にだ。男は、息をぜえぜえと吐きながら、普通の大人であれば2,3人は収まるであろうだけの広さを掘り上げた。そう、その穴は、男の暴食の産物である巨躯を納めるに足る墓穴であったのだ。
男は、穴の中に布団やクッションを敷き詰め、周りには長年愛でてきたコレクションを添え、遂には床についた。なに、万が一、目覚めれば、また仕事をすればいいさ、もし寝坊しても通勤時間を考慮しなくていいから楽だ。そんな不遜なことを考えているうちに、男はうとうとと睡魔に襲われ、いつのまにか眠りに落ちていた。
以下略
AAS
17Res/17.68 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
書[5]
板[3]
1-[1]
l20
嫉妬深い強欲デブでスケベで怒りに燃える怠け者の男「俺こそが唯一絶対の存在だ」-SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1564411184/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice