嫉妬深い強欲デブでスケベで怒りに燃える怠け者の男「俺こそが唯一絶対の存在だ」
1- 20
12: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/07/29(月) 23:45:37.52 ID:8MZ+TPk10

 残念なことに、男の目論見は大きく外れてしまった。カラオケボックスに設置されていた通信カラオケは、たとえ発電機から電気を回しても正常に稼働させることができなかったのだ。男は、店に残されたカラオケ機器の説明書を斜め読みにしてみたがよく理解することができなかった。わかったことと言えば、電気を通すだけでは通信カラオケは使えないということ程度だ。しかし、男は諦めなかった。男には、既に予備のプランがあったのだ。通信カラオケがダメなら、LDカラオケだ。

 男の父は、とにかく新しいものが好きだった。まだパソコンが一般家庭に普及していないころに、何の用途も考えずパソコンを買って母に怒られたり、ベータや3DOといったメーカー戦争の敗北者たちも軒並み家の棚に揃えられていた。LDカラオケデッキも、そんな父の最新機器収集癖の遺産のひとつであった。近所の迷惑になると、当時はあまり使わなかったものだが、世界が滅びた今、誰に気兼ねすることない。問題があるとすれば、実家に置いてあるLDの収録曲は父の趣味の演歌ばかりであったということぐらいだった。

 男の歌声には、あらんかぎりの怒りが籠っていた。だが、その歌に乗せられた感情がうまく演歌とマッチしたのか、もしオーディエンスがいたならば、彼らをあまねく感動させるだけの力があっただろう。だが、この世界にはもう鐘をならしてくれる公共放送
も沸き上がる観衆もいない。男のたった一人の演歌フェスは、男の喉がつぶれるまで続けられた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
17Res/17.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice