【ミリマス】私という撫子の
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26: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:35:31.93 ID:RAUxaTtJ0
 ――あこがれ。

 偶像は、あこがれ。
 アイドルは誰かの憧れ。誰かのなりたい姿。
 私の憧れは、あの日からずっと変わらずに大和撫子だった。
以下略 AAS



27: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:36:10.13 ID:RAUxaTtJ0
 そうだ。たったそれだけの理由で私はここにいる。そのために努力をしてきて八年間を過ごしてきたのだ。思えば、日本に触れた期間の方が触れていない期間よりも長くなっている。

 それくらいに、人生の半分以上を捧げるほどに私は、大和撫子になりたくて。
 そのための努力は惜しまなかった。だって私は誰よりも大和撫子になりたかった。
 
以下略 AAS



28: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:36:58.39 ID:RAUxaTtJ0
 ぎゅっと手を強く握りしめて、顔をあげた先の広告にとある事務所の選考会の情報が目に映る。

 芽の出るような高揚感。空に向かって葉を広げてようとしている気がした。

 そうして、アイドルを知った私は一歩を踏み出して。私はこの場所とあなたに。
以下略 AAS



29: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:38:10.18 ID:RAUxaTtJ0
 *

「……ー。……ミリー。エミリー?」
「は、はい!」

以下略 AAS



30: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:39:32.73 ID:RAUxaTtJ0
「いいえ、恥ずかしくはありません。今までの私がいるから今の私がいるんだということは、ここにきて十分教えていただきましたから」

 思い出を話すことが恥ずかしいというのは多少あるけれど、自分の過去を恥じたことは一度もない。それはここにきて、この劇場で、仕掛け人さまと皆さんに教えてもらったことだった。

「ですが……」
以下略 AAS



31: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:40:46.99 ID:RAUxaTtJ0
「すみません、変なこと言って。こうして劇場にいることも皆さんと出会えたこともどれも素敵な経験で、できることならもう一度同じ道を進みたいなと思っているんですよ」

 今の私はうまく笑えているだろうか。いま言ったことは本心。

 でも、そう思えるくらいに素敵な道だったとしても。その道が実は大和撫子に繋がっていないのなら今までの私の努力は一体なんだったのか、なんて強くない私はきっと思ってしまう。
以下略 AAS



32: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:41:55.00 ID:RAUxaTtJ0
「最初に今回の仕事……、着物のモデルの仕事があるって聞いたときに真っ先に頭に浮かんだのがエミリーだった。他の誰でもなくてエミリーだったんだ」
「そう、なんですか……」

 それは知らなかった。尽力してくださっていたことは知っていたけれど、そういう仕掛け人さまの胸の内までは何も知らない。

以下略 AAS



33: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:42:56.20 ID:RAUxaTtJ0
「だけど、どうしてもそうは思えなかった。だって真っ先に浮かんだのはエミリーだったからさ。でも浮かんだ理由までは深く考えてなかったから、改めてどうしてだろうって考えたときに、エミリーだからなのかなって思って」
「私、だからですか……?」

 私を思い浮かべた理由が私だから……?

以下略 AAS



34: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:43:33.94 ID:RAUxaTtJ0
「日本が大好きで、大和撫子になりたくて、一生懸命努力して。そういう風に歩いてきたエミリーだから伝えられる着物の魅力があるんだって松山さんには知ってほしかったから。……なにより」

 そうして仕掛け人さまは言葉をつづけた。

「エミリーに知ってほしかったんだ。エミリーにしかできない日本の魅力の伝え方があるって。エミリーだけの大和撫子で見せられるものがあるって」
以下略 AAS



35: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:44:28.06 ID:RAUxaTtJ0
 膝を抱えて部屋で泣いている。いつまでも芽が出なくて悔しい思いをしている。日本語が上手に話せなくて嫌になっている。正座で痺れた足を恨んでいる。鏡を見てため息をついている。

 そんな私。

 大和撫子になりたいと願っている。日本が大好きでいる。躓いても立ち上がって進み続けている。日本語を覚えて喜んでいる。上手に抹茶を点てられて笑みがこぼれている。努力を続けている。
以下略 AAS



36: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:47:00.66 ID:RAUxaTtJ0
 だけど、この花は。

「私だけの大和撫子に……」
 
 いつだって私と一緒だった。
以下略 AAS



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