30: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:39:32.73 ID:RAUxaTtJ0
「いいえ、恥ずかしくはありません。今までの私がいるから今の私がいるんだということは、ここにきて十分教えていただきましたから」
思い出を話すことが恥ずかしいというのは多少あるけれど、自分の過去を恥じたことは一度もない。それはここにきて、この劇場で、仕掛け人さまと皆さんに教えてもらったことだった。
「ですが……」
恥ずかしくはない。自分の過去も努力も恥じたことは決してない。
だけど、それでも。それとは別に。
ずっと心のどこかで感じていた不安を私は思いだしてしまった。
初めて着物を着た日から今日までずっと抱えていた私の弱さ。
ぽつり落としてしまった言葉は私の中にずっとあった本音。
「ときどき、わからなくなるんです。進んできたこの道が正しいのか。この道の先に大和撫子はいるのか。今までの努力は正しいかったのか。そういうことがわからなくて……」
「……」
黙りこくる仕掛け人さまに気づいてハッとなる。私は何を言っているんだろう。こんなこと言っても仕掛け人さまを困らせてしまうだけなのに。
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