30:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:57:00.34 ID:YWfCY9A20
「私には無理かも……」
その決断に至るまでの詳しい経緯を沙綾は知らないけれど、もし自分がまったく同じ立場になったらバンド活動に精を出すことなんて出来そうにもない。この世界の山吹沙綾はきっとものすごく強い女の子なんだろう。
31:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:57:43.85 ID:YWfCY9A20
いくら願っていても明けない夜はない。見慣れない自室の奇妙な居心地の悪さに寝苦しい思いをしながらも、太陽は東の空から昇ってくる。
昨日と同じようにスマートフォンのアラームに起こされた沙綾は、部屋の中を見回して、やっぱり自分が違う世界にいるんだということを否応なく突き付けられた。
32:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:58:33.88 ID:YWfCY9A20
見慣れない店で慣れたことをやって、見慣れない弟たちを見慣れない道を通って幼稚園へ送迎して、少し父親と違った父親にやたらと気遣われているうちに学校へ向かう時間になった。
沙綾は慣れないブレザーに袖を通し、カスミたちに教えてもらった花咲川高校の自分の教室を目指して歩を進める。
33:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:59:34.78 ID:YWfCY9A20
「……ここが花咲川高校」
迷子のような気持ちで学校へたどり着く。そこもやっぱり自分が見慣れたものとは幾分か違うところだった。
34:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:00:14.99 ID:YWfCY9A20
(ひとりぼっちなんだ……)
言い方が悪いかもしれないけれど、そういうことだろう。人も少なくシンとした教室では、話し声も何もしない。窓の外の部活動に勤しむ生徒たちの声だけがやたらと大きく響いてくる。
35:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:00:53.82 ID:YWfCY9A20
「はぁ」
本当に異世界に迷い込んでしまったんだ、という重たい現実が頭の中を埋めて、うなだれた拍子にため息がこぼれ落ちた。そこで自分の机に何かが書いてあるのに気付く。
36:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:01:38.90 ID:YWfCY9A20
カスミちゃんとサアヤの出会いは、この机に書いたメッセージのやり取りだと聞いた。なら、きっとサアヤも私と同じように、優しいカスミちゃんのメッセージに大きく助けられたことだろう。
姿は見えなくてもひとりぼっちじゃない。時間差はあるけど話し合える友達がいる。
37:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:02:20.39 ID:YWfCY9A20
3
「つまりそれは入れ替わりってことだな」
38:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:02:57.81 ID:YWfCY9A20
「えっと……じゃあつまり、私は違う世界の山吹沙綾になっちゃった、ってこと?」
「そういうこと」
39:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:03:29.52 ID:YWfCY9A20
「あーいや……その、サアヤ?」
「うん」
40:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:04:33.54 ID:YWfCY9A20
たられば。もしも生まれ変われるならどうなりたいか。その話の中で、有咲が悩める香澄のために、心を鬼にして突き放したことを聞いた。
どの世界でも有咲ちゃんは有咲ちゃんなんだ。口では色々言うけど、なんだかんだで友達想いの優しい女の子。
189Res/213.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20