【バンドリ】さあやとサアヤの話
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32:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 10:58:33.88 ID:YWfCY9A20


 見慣れない店で慣れたことをやって、見慣れない弟たちを見慣れない道を通って幼稚園へ送迎して、少し父親と違った父親にやたらと気遣われているうちに学校へ向かう時間になった。

 沙綾は慣れないブレザーに袖を通し、カスミたちに教えてもらった花咲川高校の自分の教室を目指して歩を進める。

 アリサの蔵への行き帰り、弟たちの送り迎えくらいでしか外の景色を見ていないけれど、花咲川の街並みはどれも自分が知っているものと微妙に違っていた。

 商店街で言えばやまぶきベーカリーの真向かいにあった羽沢珈琲店は床屋になっていて、はす向かいの北沢精肉店は八百屋さんに。花咲川女子学園への通学路に沿っていた花咲川はやや離れた場所に流れている。

 教えてもらった学校の住所を慣れないスマートフォンのマップアプリに打ち込んで、辺りをキョロキョロと見回しながら歩く。

 季節は秋の中頃。肌を撫でる風はめっきり冷たくなった。キンモクセイの香りもだんだん遠のいてきた。

 それらに郷愁的な気持ちが煽られる。元の世界でも似たような気持ちにはなっただろうけど、今この状況で感じるノスタルジーには無視できない不安や焦りの色が滲んでいるような気がした。どちらかというとホームシックと言うべきだろうか。

 不意に吹いた強めの横風にポニーテールが靡く。その髪を束ねているのも、あまり自分が付けない淡い緑をした水玉模様のリボンだった。



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