34:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:00:14.99 ID:YWfCY9A20
(ひとりぼっちなんだ……)
言い方が悪いかもしれないけれど、そういうことだろう。人も少なくシンとした教室では、話し声も何もしない。窓の外の部活動に勤しむ生徒たちの声だけがやたらと大きく響いてくる。
沙綾だけが誰にも話しかけられないという訳ではなく、教室のクラスメートたちは誰に話しかけるということもなかった。
それもそうだろう。教室には高校生というには少し年齢の高そうな人もいた。何か訳を抱えているのか、ただずっとうつむいたまま席に座る人もいた。
定時制の高校というものがどんなものなのか沙綾は見たことがないけれど、仕事をしていたり理由があって昼間に学校に来れない人が多いというのは分かっていた。和気あいあいとしている方が珍しいのかもしれない。
そう思うからこそ、沙綾はサアヤに対する同情の念がどんどん強くなってしまう。
秋の太陽はどんどん駆け足になっていく。今日の夕陽ももう稜線の彼方に沈みいこうかとしていた。
斜陽どころか夜の帳が降りかけた街。普段とはまったく違う顔をした学校。頼りない蛍光灯の光に照らされる廊下。シンと静まり返った教室。そのどれを取ってみても、ただ寂しさを煽り立てるだけのものだ。
この場所で、サアヤはひとりぼっちで授業を受けているんだ。
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