104:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:57:14.78 ID:YWfCY9A20
「前はほら、ひとりで考えなさいって言ったけど……今回は違うでしょ? もうかすみんはしっかりと歌に向き合ってるし……ひとりじゃない。沙綾だってそう。あたしと、りみと、おたえがいるんだから」
「有咲ちゃん……」
105:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:57:53.16 ID:YWfCY9A20
それから改めて考える。一番に頭に浮かんだのは、前に有咲に突き放されて沙綾の部屋で歌詞を考えた時のこと。
あの時は自分のはじまりの歌だった。じゃあ今度の歌は、どんな歌なんだろうか。
106:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:58:32.54 ID:YWfCY9A20
『なにかを乗り越えたと思っても、実際、乗り越えたのだとしても、またつまづくことはある。うまくいったり、いかなかったり……。つらいことも起こるし、思いがけないことも起こる……。人生は魔法じゃないから』
その時の香澄は、引き込まれるように沙綾を見つめていた。
107:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:59:00.64 ID:YWfCY9A20
「……みんな、ありがとう」
自分を取り囲む大切な友達を順々に見やって、香澄はお礼を言う。眉間の皺はとっくになくなって、瞳には先ほどまでにない光が宿っていた。
108:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 11:59:30.72 ID:YWfCY9A20
書きたいこと、伝えたいこと。それが決まると、香澄はどんどん歌詞を編んでいく。
その内容は、沙綾がサアヤと入れ替わる前日、有咲の蔵で他愛のない“たられば”の話をした時にちょこっと歌った歌と通じるものがあった。だから、もともと大まかに出来ていたメロディーや歌詞に、今の気持ちを詰め込んでいった。
109:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:00:15.00 ID:YWfCY9A20
・ ・ ・
110:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:00:42.28 ID:YWfCY9A20
◆
時計の針はいつもよりも三十分早い時間を指していて、花咲川女子学園の最寄り駅にも人が少なかった。見慣れた街並みもどこかシンとしている。
111:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:01:10.03 ID:YWfCY9A20
さーやも、サーヤも……いっつも自分ひとりで色んなことを抱え込む。みんなに心配かけないようにって、自分だけでなんとかしようとする。無理にでも笑おうとする。私が知ってるさーやは最近そういうことが少なくなったけど、いま私たちの傍にいるサーヤは昔のさーやそのものだ。
そういえば、文化祭の時は本気でさーやに怒っちゃったな。今ではもう懐かしいことを思い出して、香澄は少しだけ照れくさい気持ちになる。
112:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:01:37.14 ID:YWfCY9A20
――心配してくれてありがとう、香澄。大丈夫だよ、きっとなんとかなる。こっちの香澄ちゃんたちもね、ずっと沙綾のことを……もうひとりの私のことを心配してるんだ。
私が香澄たちに元気を貰ったみたいに、もうひとりの私が元気になれることを香澄ちゃんたちに伝えるよ。だから、きっと大丈夫。絶対になんとかなる。
113:名無しNIPPER[sage saga]
2019/05/25(土) 12:02:13.27 ID:YWfCY9A20
昨日の朝一番に、沙綾の机の上を確認して、書かれていたメッセージ。香澄はその大親友からのメッセージを、なんの疑いもなく信じている。そして、動物的な勘というか、第六感というか……そういうものが、確かな予感を感じ取っている。
それは、今日、サアヤと共に教室に行けば、きっと何かがいい方向に変わっていってくれるような気がする……そんな予感。沙綾がアクションを起こして、それをもうひとりの香澄が受け取って、何かを届けてくれるんじゃないかっていう、確信めいた予感だ。
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