69:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:18:21.75 ID:D/gZfYJM0
――役者だてら、とまでは言わないけど、ふふっ、何とも芝居がかった振る舞いだねー。
わざとらしく伏し目がちに、暗い表情で雰囲気作って、さも自分は目撃者であるかのように気取っている。
関係が無いように取り繕うということは、自分は第三者ではないと言ってるのと同じだ。
70:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:23:36.31 ID:D/gZfYJM0
――。
「既に知っていた、とは?」
「前もって相葉夕美は、事務所のプロデューサーや相方である一ノ瀬志希ちゃんに、当日休むことになる可能性を示唆していたんだよ。
つまり、事務所側も完全に確信犯のグルだったってことでしょ。
71:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:33:25.20 ID:D/gZfYJM0
「いや……事実だよ、あの記事は」
「事実みたいなもの、ということは、あの記事は事実ではないということですか?」
「うるさいな、事実だって言ってるじゃないか!」
「そう言い切れるのは、そう信じたいからですか? それとも、そういう事にしておきたいから?」
「さっきから何なんですか君は! 失礼だなぁ!」
72:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:35:30.67 ID:D/gZfYJM0
彼は首を振った。苦し紛れの、意味の無い行為だ。
「知らない」
おや、でもやっぱ夕美ちゃんじゃないんだ。
73:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:42:43.11 ID:D/gZfYJM0
事務所へ帰る道すがら、思考を整理する。
とりあえず分かったのは、あの写真は夕美ちゃんじゃなかったということだ。
知っていたつもりだったのに、その事実はあたしを大いに安堵させた。
74:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:48:31.04 ID:D/gZfYJM0
事務所に着くと、プロデューサーが他のプロデューサーと思しき男性と、取っ組み合いのケンカをしていた。
他の社員さん達も、総出で彼らの周りを囲んでいる。
「お前、よくもウチの夕美を……!!」
75:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:51:55.44 ID:D/gZfYJM0
扉を開けると、夕美ちゃんが隅っこでうずくまっていた。
かわいそうに――心根の優しい彼女は、自分のせいであの人達がケンカをしていると思っているのかも知れない。
でも、それは全くのお門違いだし、今のあたしには夕美ちゃんが無実であることを証明する用意がある。
76:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:54:38.65 ID:D/gZfYJM0
彼女と目を合わせたまま、あたしはゆっくりとラボ内のデスクに歩みを進める。
「あ、それともそうか、なまじ容姿が似通っているから、投影しちゃったのかにゃ?
自分と夕美ちゃんだったらそれほど変わりが無いのに、夕美ちゃんだけがチャンスを得たのが余計に悔しかった、とか」
77:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:58:11.16 ID:D/gZfYJM0
「言った? 何を?」
「私、確かに、夕美ちゃんや志希ちゃんが羨ましくて、妬ましくて……ズルい、って思っちゃって、だから……
そう、余所の芸能事務所に情報を渡して、でっち上げたのは、本当よ、でも……」
78:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:02:04.48 ID:SYS+AFC90
――夕美ちゃんが、知っていた?
自分が、あの不倫をでっち上げられることを――不当に追い詰められることを?
「ご、ごめんなさい……週刊誌には、わた、私の方から、白状して……!」
79:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 00:03:10.43 ID:SYS+AFC90
「志希……!」
あたしの後ろで、彼の驚く声が聞こえた。
こんな非日常はちっとも歓迎しない。
138Res/139.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20