75:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:51:55.44 ID:D/gZfYJM0
扉を開けると、夕美ちゃんが隅っこでうずくまっていた。
かわいそうに――心根の優しい彼女は、自分のせいであの人達がケンカをしていると思っているのかも知れない。
でも、それは全くのお門違いだし、今のあたしには夕美ちゃんが無実であることを証明する用意がある。
「夕美ちゃ……」
言いかけて、あたしは言葉を止めてよくよく彼女を見た。
目の前の女の子は、膝を抱えた姿勢のまま、ゆっくり顔だけを上げてこちらに向けた。
あたしに対し、ひどく怯えているようだ。
この子は、夕美ちゃんじゃない――でも、似ている。
髪型も服装も背格好も。
にゃるほど、さっきまでのあたしみたいに大袈裟な変装をせずとも、彼女だったら夕美ちゃんにそっくり似せる事は可能だろう。
そして、この事務所の中で見つかるということは――。
「キミが夕美ちゃんを陥れた裏切り者、ってことでいいのかにゃ?」
目の前の女の子は、なおも怯えた目をしながら、奥歯を小さくカチカチと振るわせている。
「解き明かせてみせる前に、まさか自白される形になるとは思っていなかったなー。
キミやキミのプロデューサーの気持ちも分からなくはないけど……いや分からないけど、羨み恨むべきはあたしであって夕美ちゃんじゃなくない?」
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