70:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:23:36.31 ID:D/gZfYJM0
――。
「既に知っていた、とは?」
「前もって相葉夕美は、事務所のプロデューサーや相方である一ノ瀬志希ちゃんに、当日休むことになる可能性を示唆していたんだよ。
つまり、事務所側も完全に確信犯のグルだったってことでしょ。
仕事を放り投げるのだって信じられないのに、ましてそれを予定していただなんて……何でそんな事ができるのかなぁ、まったく」
腕を組み、苛立たしげに指をトントン叩きながら首を捻ってみせるオタクさん。
うーん、お芝居に疎いあたしでも、この人はちょーっと残念なカンジかにゃー。
「へぇ〜〜、なるほどぉ〜。ところで」
あたしは身を乗り出した。
「当日、そのイケメン俳優さんってどれくらいお酒飲んでたんでしたっけ?」
オタクさんは、「えっ?」と一瞬驚いた顔をして、すぐに手を振った。
「いや、そんなの分からないよ。
でも、彼もマイナーとはいえ現役アイドルと一発やれるって、相当浮かれてたんだろうね」
「彼は、普段はあまりアイドルに興味が無い、ストイックな役者さんだというお話でしたが」
「ハッ! アイツだって、カメラが回ってない所じゃ色んな女を泣かせてきたんだよ。
人間の本性なんてそんなもんさ。下半身が付いてりゃやることは決まってる」
「なるほどー、なまじ身に覚えがあるから迂闊に言い返せないこともあなたは予測済みだったんですねー」
「ていうか、ほとんど事実みたいなもんじゃんあの記事だって、別にアイツの女癖なん……」
――そこまで喋って、ようやく彼は我に返ったらしい。
一瞬、体をピタリと硬直させ、あたしの顔を恐る恐る見つめ直した。
「事実みたいなもの……とは、どういう意味でしょうか?」
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