57:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:11:08.80 ID:D/gZfYJM0
あたしはプラケースに手を置き、二人を交互に見た。
「夕美ちゃんが、このピンクのキンモクセイの開発実験をしていたことにする」
58:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:13:43.49 ID:D/gZfYJM0
「じゃあ、ピンクの小物も身につけてよ。ピンクのキンモクセイを開発する理由の裏付けにもなるし」
あたしが冗談で言ってみると、プロデューサーは少し狼狽えた。
「う、ぬぬ……よし、とりあえず手帳とスマホケースはピンクにしてみるか!」
59:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:39:53.87 ID:D/gZfYJM0
まだ駆け出しで、全国ネットに出てくるようなアイドルではないことが幸いしたのかも知れない。
メディアが大きく取り上げるのは専らイケメン俳優の方ばかりで、夕美ちゃんへの注目度は想定していたほどではなかった。
しかし、ネット上ではかなり辛辣な意見が飛び交っている。
彼らにとっての問題は、有名かどうかではなく、安心して叩けるネタかどうかなのだろう。
60:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:42:16.40 ID:D/gZfYJM0
留意しなきゃいけないのは、あたしが用意した“真実”は、極めて薄氷に近い代物だということだ。
例えばの話、ライブイベント当日に事務所に引き籠もっていたはずの夕美ちゃんに関する目撃情報がどこかであった場合、一発でアウトである。
それは、あるいは不倫疑惑そのものをシロにする証明にはなり得るが、同時に、間違いなくあたし達の“真実”をクロにしてしまう。
61:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:44:46.66 ID:D/gZfYJM0
とある日。
――お、いたいた。
「Excuse me♪ そこのミスター」
62:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:51:42.40 ID:D/gZfYJM0
「あのね、どこの記者さんか知らないけど、あの記事は全くの事実無根なんだよ。
すぐにでも名誉毀損で訴えたいくらいだ」
怒りを隠そうとせずそう捲し立てて、俳優さん達は足早にあたしのもとを去ろうとする。
あたしの方からは、自分が記者だなんて一言も言ってないのにね。ふふっ。
63:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:56:12.48 ID:D/gZfYJM0
そして、さっき彼は「すぐにでも訴えたいくらいだ」と言った。
つまり、訴えたくてもできない事情が彼にはある。
さも後ろ暗い事情が――。
行動を起こしたら、それを白日の下に晒すというリスクをも背負うことになるだろう。
64:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:59:23.92 ID:D/gZfYJM0
マネージャーさんには丁重にお引き取りいただき、俳優さんと二人で喫茶店に入り込む。
本当だったら、プロデューサーにも手伝ってもらうべきだったかなぁ。
でもあの人、結構ウッカリ屋さんだし、ヘタ打たれたらヤだし。
65:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:03:46.43 ID:D/gZfYJM0
Hmmm――にゃるほど。
彼にとっての知り合いだったなら、必然的に夕美ちゃんじゃないんだろうけど――。
この情報だけで、直ちに断じることはできないか。
66:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:07:24.39 ID:D/gZfYJM0
彼は続けた。
「君の言う、協力関係にある芸能事務所――今となっては厄介なライバル事務所でしかないが、そこの俳優友達がアイドルオタクでね」
話を聞くと、専ら都内のマイナーアイドルを応援する事に執念を燃やす、変わった人がいるらしい。
67:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:11:44.05 ID:D/gZfYJM0
紹介されたアイドルオタク俳優さんは、想像していたよりも悪くはない容姿だった。
まー、俳優になるくらいだし、そりゃそうか。
あたしの素性がバレてはいけないので、カツラを変え、ギトギトに厚化粧しておいた。
芸能ジャーナリストという設定は、まだギリギリ許されるかにゃ?
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