63:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:56:12.48 ID:D/gZfYJM0
そして、さっき彼は「すぐにでも訴えたいくらいだ」と言った。
つまり、訴えたくてもできない事情が彼にはある。
さも後ろ暗い事情が――。
行動を起こしたら、それを白日の下に晒すというリスクをも背負うことになるだろう。
藪蛇というヤツだ。
つまり、彼の持つクリーンなイメージは、彼の事務所によって作り込まれたものであり、彼らにとってもそれを守り切れるかどうかの瀬戸際なのである。
ネットだけでなく、メディアからも連日追求される彼らにとって、いつそのカードを切るかの葛藤は、あたし達のそれよりも深く強いものなのかも知れない。
でも、それはあたしが彼を追求しなくていい理由にはならない。
「どうかお引き取りください。これ以上は警察を呼びますよ」
彼のマネージャーさんが目の前に立ち、脅しつける。
どっこい謙虚とは無縁のあたしには通用しないんだよねーそういうの。
「お引き取りしてもいいですけど、あたしが持ってる情報をどこかに売っちゃってもいいんですか?」
そう言って、あたしはニヤニヤ笑いながら一つのボイレコを取り出した。
中身は空。言うまでもなくブラフだ。
でも、後ろ暗い彼らの警戒心がそれを無視できないであろうことを、あたしは知っていた。
「まずはお互い、話し合いましょうよ。できれば二人きりでね?」
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