67:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 23:11:44.05 ID:D/gZfYJM0
紹介されたアイドルオタク俳優さんは、想像していたよりも悪くはない容姿だった。
まー、俳優になるくらいだし、そりゃそうか。
あたしの素性がバレてはいけないので、カツラを変え、ギトギトに厚化粧しておいた。
芸能ジャーナリストという設定は、まだギリギリ許されるかにゃ?
「あ、取材ですか!? あぁどうぞどうぞ、そこに掛けてください」
オタクさんはあたしが一ノ瀬志希であることに気づく素振りを見せず、事務所の応接スペースにアッサリと案内してくれた。
今が旬の男性俳優が大注目する若手アイドル、と銘打って特集記事を組みたい。
そう言ったら、彼はマネージャーも通さず大喜びであたしを受け入れたのである。
脇が甘いねー、大丈夫この事務所?
「今注目すべきは、やっぱり今井加奈ちゃんかなー!
高知から出てきた子なんだけど、この笑顔見てよ、歯を見せて笑うのがすごく可愛いんだ。
そして、いかなる時でもメモを取る事を忘れない。真面目だよね、今時の子には無い素朴な魅力さ。
それでね? 皆知らないだろうけど、この子そばつゆを買っている事が多いんだよ。
自分の家用とかじゃなくて、明らかに仕事先で、飲み物とかと一緒にだよ? ミステリアスだよねー。
あとは、綾瀬穂乃香ちゃん。この子はバレリーナから転身しただけあって、ダンスに適正があるんだけど、注目してほしいのはそこよりもこれ!
この、緑色のキモカワイイキャラクターのグッズをよく身に着けているんだ。
好きなんだろうねー、彼女も等身大の女の子なんだ。普段のストイックな姿とは想像できないギャップの…」
予測した通りだ。
概してオタクというのは、自分の「好き」を外部に発信したくてしょうがない、どこまでも衒学的な人種なのである。
推しメンについて滔々と熱く語る彼の姿は、あたし達のプロデューサーとちょっと重なる部分もあった。
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