57:名無しNIPPER[saga]
2019/04/28(日) 22:11:08.80 ID:D/gZfYJM0
あたしはプラケースに手を置き、二人を交互に見た。
「夕美ちゃんが、このピンクのキンモクセイの開発実験をしていたことにする」
「何だって?」
混乱しがちなプロデューサーを半ば無視して、あたしは言葉を続ける。
「夕美ちゃんのお花に向けた情熱が常軌を逸しているの、あたし達もファンの人達にも、十分知られているでしょ?
お世話をするだけじゃ飽き足らずに、自分で新種を発明したくなったことにしちゃえば、そこそこ納得しちゃう人もいるんじゃないかな。
発明したくなった動機は、たとえば普段お世話になっているプロデューサーへのプレゼントのためとか、適当に屁理屈を付けてさ」
言いながら、あたしは夕美ちゃんの顔を見た。
彼女は、少し驚いた顔をしてはいるけれど、冷静にあたしの話を聞いているっぽい。
「ご近所さんにもこのキンモクセイの香りは届いているだろうから、信憑性も担保できるし。
もちろん、事務所の中での口裏合わせは必要になるけど、そこは皆にも協力してもらえるんでしょ?」
「あぁ、当たり前だ」
プロデューサーは、胸を張った。
「何なら俺も“キンモクセイ大好き人間”として振る舞えば、プレゼントのためっていう理由づけの信憑性は上がるだろう。
ここ最近は、外回りにだってキンモクセイの香りをプンプンまき散らかしているからな」
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