115:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:15:30.46 ID:SYS+AFC90
「次の年、ここに遠足で来るのを提案したのも、先生だったの。
この素敵な場所を皆にも一番に教えたくて、私、はりきっちゃったなぁ」
それからというもの、定期的にこの場所にも通って、先生の草木の手入れを手伝っていたのだという。
116:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:18:22.50 ID:SYS+AFC90
――そうか。
自身の潔白の証明のために大切な人の死を晒し、それを辱めてしまうことを彼女は避けたかったのだ。
だから、あの日に起きたことを夕美ちゃんは黙して語ろうとしなかった。
117:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:21:40.10 ID:SYS+AFC90
「ありがとう、志希ちゃん……本当にありがとね」
夕美ちゃんが私の方へ顔を向けた時、綺麗な瞳から大粒の涙が一つ流れた。
118:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:24:47.37 ID:SYS+AFC90
「はぁ……はぁ……」
こんなに感情が昂ぶっている自分に内心驚いている。
どこまでも自分にとって淡泊であるはずの結果に、許し難いものがあるなんて考えもしなかった。
119:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:27:54.69 ID:SYS+AFC90
あたしは夕美ちゃんを助けたかっただけなんだ。
真実を明らかにすれば夕美ちゃんが置かれた不当な境遇はきっと洗われて、問題なくアイドルを続けられるはずだった。
これじゃあ何のために、あたしはいたんだ――どうして、夕美ちゃんは辛い思いをしなければならなかったのか!?
120:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:29:42.47 ID:SYS+AFC90
どうして皆、そうやって分かったフリをして、勝手なレッテルを貼るんだ。
その場にガックリと膝をついた。
視界に映る芝が滲んで揺れる。ブチブチと握りしめると爪の間に土が入って、それも構わず次々に引っ掴んだ。
121:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:32:21.72 ID:SYS+AFC90
甘い匂い――キンモクセイの香りだ。
研究を進める中で、飽きるほどに散々嗅いだはずなのに、あたしのささくれだった心は不思議なほどにその温かな匂いで安らいでいく。
「あ、うぁ……」
122:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:33:25.40 ID:SYS+AFC90
――――――
――――
123:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:35:21.84 ID:SYS+AFC90
『しょうがないですよ。志希ちゃんはワガママの言わない、手のかからない子だったのでしょう?』
『うん! 志希ちゃん、この間初めて私にワガママを言ってくれたんだよっ』
124:名無しNIPPER
2019/04/29(月) 02:36:55.66 ID:SYS+AFC90
『えぇと、そ、そうやって自分の意志を他人に依存させるのは良くないと思いますっ! って志希ちゃんが言ってました!』
『なるほどなぁ、ウーム、さすが我が娘……うおっ、辛ぁ!!』
『タバスコ入りのジャスミンティーです。この子の好みかと思ったのですが……』
125:名無しNIPPER[saga]
2019/04/29(月) 02:40:28.81 ID:SYS+AFC90
『志希ちゃん……まだ正直、私もどうしたらいいのか、よく分かってないんだ』
『でも、今のポッカリ空いた気持ちのまま続けても、誰かに迷惑をかけちゃうかも』
『なんて……他人のせいにするのはズルい、だよね? でも……』
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