【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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15: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:53:13.19 ID:khuu0cd90
「口元を隠しているのは、不意に表情を覗かれるのを恐れているからです」

 取り繕う時間を求めているのだ。自分を見抜かれるのが怖くて、いつだって周囲を見つめ返している。

 私は逆だった。でも、知っていた。周囲から隔絶されるための壁を作りたくて、いつも音楽で耳を塞いでいたから。
以下略 AAS



16: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:54:26.43 ID:khuu0cd90
 それなら。

 だったら。

 私と、同じだというのなら……!
以下略 AAS



17: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:55:26.67 ID:khuu0cd90
 傘が宙を舞った。はらりはらりと雨の中を泳いで、私の足元に落下した。

 落ちた頃には既に、彼女は走り去っていた。足音すら聞こえなくなって、耳に響くのは途切れることのない雨音だけ。後悔の念が、じわりと心に染み込んでくる。
 
 ……私は、そもそも何をしたかったのだろう。彼女の心を暴き立てて、それでどうするつもりだったのだろう。
以下略 AAS



18: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:56:43.54 ID:khuu0cd90
 どのくらい、たったのだろう。

「……灯織か?」

 見知った黒い傘と白いコートが、雨の向こう側から現れた。
以下略 AAS



19: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:57:44.67 ID:khuu0cd90
「……あの、プロデューサー」

「なんだ?」

 私は道すがら、ふってわいた疑問をぶつけることにした。自らを『ふゆ』と呼ぶ彼女のことを、何かもっと知りたくなって。プロデューサーなら、答えを示してくれる気がしたのだ。
以下略 AAS



20: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:58:34.98 ID:khuu0cd90
「……プロデューサーは、『本当』を見ていたいんですね」

「そうかもな。ああ、きっとそうだ」

 『実像』に対する『虚像』。『本当』を見ていたいというプロデューサーの言葉は、暗に『虚像』の存在を肯定しているようだった。
以下略 AAS



21: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:00:17.47 ID:khuu0cd90
 首をひねってから、プロデューサーは努めて柔らかな口調で言った。

「それは……どうだろうな。仕事がうまくいってる時の自分は好きだし、行き詰っているときの自分は嫌いだ」

「ふふっ、結局のところ仕事ですか」
以下略 AAS



22: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:01:31.34 ID:khuu0cd90
「わっぷ……!」

 ぶつかった。いつの間にか、プロデューサーが立ち止まっていた。

「虹だ」
以下略 AAS



23: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:02:23.95 ID:khuu0cd90
「そういえば、仕事で思い出したんだけどさ」

 プロデューサーが話を戻した。私は短く「はい」と相槌を打つ。

「今度、新ユニットを立ち上げることになったんだ」
以下略 AAS



24: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 18:03:17.56 ID:khuu0cd90
 ――こうして私は出会った。冷たい雨のなかで、彼女とすれ違った。どこか逆さまで、どこか似ている、黛冬優子という女性を知った。

 ――そうして彼は出会ったのだろう。暖かい日の下で、彼女と言葉を交わして。『ふゆ』と呼んでほしい少女を、かたくなに冬優子と呼び続けるのだろう。

 それは、あったかもしれない邂逅。柔らかな春の一幕に、私は目を閉じて想いを馳せる。
以下略 AAS



25: ◆/rHuADhITI[sage saga]
2019/04/07(日) 18:04:20.41 ID:khuu0cd90
終わりです。お目汚し失礼しました。

灯織の対という観点から一筆です。


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