487:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:43:54.77 ID:CaLDwjtG0
薄く浮かべられた彼の笑みに透水は満面の笑みで返した。
透水「よかったぁ……紺之介さん、導路港で初めて会ったときよりすごく怖い顔してたから……」
488:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:45:01.63 ID:CaLDwjtG0
吃る透水、それを見つめる紺之介。
少しばかり膠着した両者だったがとうとう透水が紺之介の視線から逃げるようにして目をそらし、そうして露骨に声を上げると長湯から立ち上がった。
透水「ああきもちよかったぁ〜!」
489:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:45:46.91 ID:CaLDwjtG0
汗にも似た水滴が透水の頬を伝う。
彼女が唾を飲み込んで一呼吸置いたとき、それまで『大した理由ではない』と決めつけていた紺之介もつられて漂う緊張感に当てられた。
紺之介(一体何をそんなに躊躇う必要がある)
490:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:46:29.17 ID:CaLDwjtG0
紺之介「ふっ……! ふっ……!」
日に十里ばかり渡り歩き夜は鍛えるために真剣を振るう……当然今日も既に疲労を蓄積させた紺之介の身体であったが何故かその身は眠るにいたらなかった。
491:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:47:10.43 ID:CaLDwjtG0
「精がでるのう」
そしてその動揺は突如形となりて夜深き闇に浮かびあがる。
声が耳に入るやいな腰の碧鞘を握り込んだ紺之介であったが、ひとまず喉にせり上がる『のうとう』の四文字を呑み込むとその動揺の根源を無理やり振り払うのをやめた。
492:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:47:54.18 ID:CaLDwjtG0
愛栗子「じゃが、それではあやつらには勝てぬ」
だが聞く前に加えて彼の癇に触る愛栗子の言動。紺之介はそちらの方が気に食わず思わずそれについての返答をしてしまった。
紺之介「だからこうして少しでも鍛えている」
493:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:49:10.65 ID:CaLDwjtG0
愛栗子「はあ、強情なやつよの。勝てぬと言っても全く勝機がないと言っておるのではない。ぬしにとっての勝利とはすなわち幼刀児子炉を手中に収めつつ源氏を制することじゃろう? それが不可能なのじゃ」
紺之介「……」
一言も発さずまるで刀を振るう絡繰のようであった彼の腕が止まる。
494:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:50:08.54 ID:CaLDwjtG0
ここまでの出来事で彼らが児子炉の凶暴さを測れる尺は大きく二つ。
一に盾のような硬度を有すると謳われた俎板を破壊していること。
二に紺之介をも唸らせた刃踏の戦意を削ぐ包容力を有無を言わさず貫いた狂気。
どちらも人智を超えた幼刀の力を覆したとされる情報である。
495:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:51:05.02 ID:CaLDwjtG0
紺之介「どういうことだ?」
紺之介ひとまず愛刀を納め愛栗子の方へと向き直る。
愛栗子「あの控え書きの順は覚えておるな。将軍様が炉を最後に封じ込めたのは彼女を最愛としておったからじゃ。奴はそのことに気づいておらぬ。故に、将軍様のため、奴のためにわらわはもう一度二人を黄泉にて会わせてやるべきじゃと考えておる」
496:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:53:36.02 ID:CaLDwjtG0
愛栗子「深く愛した故にあのように歪んでしもうたが、奴の恋愛は真のものじゃ。わらわはその尊さに敬愛を捧げたい」
497:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:54:59.25 ID:CaLDwjtG0
辺りは夜。季節は冬間近。
彼らの間には灯一つなし。
しかし微かに慣れた紺之介の夜目に少女の瞳は大きく映った。
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