235:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:53:44.28 ID:f3jC59Mz0
であればここで息を絶やすか逃げ延びるかの二つに一つであるがかの紺之介戦場だけに生ける剣豪ではなし。
美しき鋼見たさに生に執着するもまた剣豪と捉える彼にここで絶える道は無かった。
改めて距離を取り刀を構え、源氏の隙を伺う。
236:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:54:27.34 ID:f3jC59Mz0
源氏「さァな。ただヤツは他の幼刀が憎いだとかでそれらに対する鼻利きが良くてな……俺が情報も無しに幼刀に辿りつけるようになったのはアイツ様々よ」
源氏「児子炉とは利害も一致してるしな。俺も幼刀と戦いたがっているがヤツもヤツで幼刀の破壊を目論んでやがる。利害が一致しすぎてヤツが暴れ過ぎてねェかは心配になるがな……楽しみが減っちまうのは色々と堪える」
紺之介のこめかみに大粒の汗が走る。
237:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:54:55.88 ID:f3jC59Mz0
絶体絶命の境遇。
238:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:56:12.49 ID:f3jC59Mz0
…………………………
奴「ぅ、ぐひゅ……ぅ゛〜」
べそをかく奴の前に漆黒の足音が迫る。それは一歩また一歩とかさねるごとに重みを増し、枯葉や枝木を強く軋ませた。
239:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:56:50.08 ID:f3jC59Mz0
着々と葉を割る足音は立ちはだかる彼女らを前にしてとどめられた。
児子炉「っ……!」
240:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:57:19.08 ID:f3jC59Mz0
乱怒攻流「あ、ちょ……あんたも待ちなさい!」
その小さな背中にもう乱怒攻流の言葉が届くことはなし。虚しく高木々に吸われた彼女の声を愛栗子が供養するかのようにいさめた。
愛栗子「よいよい走らせておけ……それよりも今はこっちの黒づくめの方じゃ」
241:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:58:57.88 ID:f3jC59Mz0
愛栗子「乱、導路港で笛をうさしたとき……ぬしはわらわも戦っておればああはならなかったと申したの」
愛栗子が真剣な面持ちのまま依然として困惑気味であった乱怒攻流に話を振った。
流れに乗せられそのまま首を縦に振りそうになった乱怒攻流であったが寸手でいつもの強情な我に返りて虚勢を張る事とする。
242:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:59:46.96 ID:f3jC59Mz0
愛栗子「その借、ここで返させてはくれぬかの」
愛栗子が己の左胸を手のひらで包み込んだ。瞬間乱怒攻流は目を見開く。彼女は愛栗子のそこに何があるのかを知っていた。
乱怒攻流「面倒臭がりのあんたがその金時計の『刀』を使うだなんて」
243:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:00:15.26 ID:f3jC59Mz0
児子炉「あ゛り゛す ! あ゛り゛す! あ゛ぁ゛ぁ゛り゛ぃ゛!」
世に存在する怨恨やら憎しみやらを可視化させたかのような邪気が児子炉と熊人形を包み込み黒い稲妻となって電光石火の愛栗子を迎え撃つ。
白き光の如き愛栗子と黒の怨みを纏う児子炉がぶつかり合うとき、それがこの旅の果てと乱怒攻流が直感で悟ったときだった。
244:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:02:41.58 ID:f3jC59Mz0
……………………………
薄暗い裏路地に一人、源氏は億劫な表情を浮かべつつ児子炉の鞘を抜いた。
245:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 10:03:34.36 ID:f3jC59Mz0
………………
紺之介「源氏、率直に言うとだ……今の俺はお前に本気になれない」
源氏「あ゛? そう水臭ェこと言うなよ。本気で殺し合おうぜ? なにせ俺はてめェの親父の仇なんだからよ」
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