「おはよう。捻挫少年。」
1- 20
30: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:33:52.83 ID:piIM8FBL0

「大学生のときに色んな所に行けばよかった!」
「キミは絶対に大学生になったら、時間のかかることをした方が良いよ!」
「原付で日本を回るとか良いよねー!」
と、独り言のように喋りかけてくる。
以下略 AAS



31: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:42:26.86 ID:piIM8FBL0

試験対策と一方的な雑談でその日は終わった。
意外と集中して勉強できたことに驚いていた。自習中にクラスの女子が横で喋っている時と何が違うのか分からないが、気が散ることがない。声とか話し方の問題だろうか。

「今回の対策は付け焼刃だけど、試験頑張ってね。」
以下略 AAS



32: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 13:47:26.35 ID:piIM8FBL0

次の試験結果が悪くても彼女は気にしない気もしたが、部活も辞めて
勉強も教えて貰っている身で進歩がないというもの嫌だったので、
テスト期間が始まる前も図書館に来て勉強するようになった。
その間、図書館で会うかもしれないと思ったが、彼女を見かけることはなかった。
以下略 AAS



33: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 13:48:13.57 ID:piIM8FBL0

ほどなくテスト期間に突入し、全部活動が活動停止になる。
自由な放課後を手に入れた大概の生徒は、勉強会と称して近くのファミレスで集まったり、
カラオケに行ったりと、テスト期間を満喫している。

以下略 AAS



34: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 13:49:29.90 ID:piIM8FBL0

「勉強ばっかしてねーで、ボーリングでもいこーぜ!」
「捻挫してるやつをボーリングに誘うかね、フツー。」
「そりゃカモ要員。」
「はぁ?お前なんて捻挫どころか両足骨折でも勝てるわ。」
以下略 AAS



35: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 13:50:08.33 ID:piIM8FBL0

毎日、鹿島とじゃれている内に期末テストは終了し、以前のように最後の追い込みをかける部活の熱気が戻ってきた。
放課後の学校に居辛さを再び感じるようになる。
授業が終わると、部活に打ち込んでいる友達や知り合いを横目に、そそくさと大学図書館へ向かう。
このころには大学で勉強することが少しの優越感をもたらしていた。
以下略 AAS



36: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 13:51:05.50 ID:piIM8FBL0

土曜日、図書館で佐藤さんと待ち合わせ。
佐藤さんは僕を見つけると「おーい、ひさしぶり!捻挫少年ー!」と手を振って歩いてきた。
2週間しか経っていないが、かなり久しぶりに感じた。

以下略 AAS



37: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 15:22:05.83 ID:piIM8FBL0

「捻挫少年すごいよ、全体で30点くらい上がってる。」
「褒めてます?」
「いやいや、そこは素直に喜ぼうよ。実際に点数は上がってるんだし。」
「今までと比べて結構勉強したつもりだったんですけど…」
以下略 AAS



38: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:22:29.68 ID:mYk8szNr0

暖かい風が構内を吹き抜けて、西日がグラウンドと教室を茜色に染めている。
真新しい鞄と制服を着た学生が増えたこの学校の最上級生になっても、自分自身には何も変化を感じていない。
ただ、受験という壁が迫ってきているだけのようだ。
こう思うと入学のときから、部活で面倒をみてくれた先輩たちはどんなに頼もしかっただろうか。
以下略 AAS



39: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:23:03.40 ID:mYk8szNr0

テスト期間に行ったボーリングでハンデと言って左手で投げて、あっけなく惨敗した鹿島には、残念賞として新しいグリップと安全のお守りを贈っておいた。
友人のラケットにはその新しいグリップが巻かれ、かばんにはお守りがついている。
成績は同じぐらいでパッとしないが、テニスにおいては中々センスのある彼には怪我だけはしてほしくなかった。
真剣な顔で黄色いボールを追いかける友人の背中を見ながら、今日もテニスコートの脇を抜けて図書館へと足を向ける。
以下略 AAS



40: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:24:33.13 ID:mYk8szNr0

春の晴れた土曜日は心なしか開架室も明るく、大学全体に活気が戻ってきたようだった。
昨日の夕方はキャンパスの至る所で、大学生が土日の新歓に誘うためギラギラさせて新入生を探していた。


41: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:26:06.27 ID:mYk8szNr0

「もしかして元々勉強嫌いじゃなかった?」
少し伸びて肩下ほどの長さになった髪を手櫛で整えながら先生は言う。
「んー、そうかもしれません。自由研究とか自分の好きなことを調べるのは好きでした。」
「へー、だからあんまり文句も言わずにしっかり勉強してるんだね。塾の生徒の中には高校3年の夏を過ぎても、言われてしかやらない子もいたから。」
以下略 AAS



42: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:26:41.13 ID:mYk8szNr0


春も過ぎ去って、だんだんと湿気と暑さが辛くなってくる。
が、図書館の中はいつも一定の湿度と気温が保たれているため、とても快適である。
1階の休憩室でこちらの要求を無視して、一方的に買ってもらった甘ったるいイチゴオレを飲みながら、佐藤さんと一息ついていた。
以下略 AAS



43: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:33:25.14 ID:mYk8szNr0

横でクスクスと笑っている彼女を見た時、不思議とこの大学に入りたいと思った。

自分もこの大学に入れたら、楽しく過ごせるかもしれない。
テニスが上手くなくたって、勉強が出来なくたって、こんな風に笑って過ごすことが出来るかもしれない。
以下略 AAS



44: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:34:17.28 ID:mYk8szNr0

「ねぇ、佐藤先生。」
「ん?どうしたの?」
「僕、志望校はこの大学にしようと思います。」
「え?」
以下略 AAS



45: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:34:50.69 ID:mYk8szNr0

「じゃあそろそろ休憩終わりにしよっか。」
佐藤さんは携帯で時間を確認して腰を上げた。
僕も甘ったるいイチゴオレの空き箱を捨てて、腰を上げる。

以下略 AAS



46: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:41:18.98 ID:mYk8szNr0

夏休み前になると大抵の3年生は部活を引退する。
鹿島も個人戦では良いところまで行ったそうだが、シード相手とあたり彼の部活は終わった。

後日、後輩からもらった寄せ書きを自慢しに来た。
以下略 AAS



47: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:41:47.16 ID:mYk8szNr0

そんな時に、4月初めに受けた模試の結果が返ってきた。思わず頭を抱える。
模試を受けた時点では、近くの大学から選んだ中の一つではあったものの、現実を知る。
模試の結果を受けて各々が一喜一憂しているうるさい教室で、鹿島が話しかけてきた。

以下略 AAS



48: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:42:37.09 ID:mYk8szNr0

あらゆる先生から「夏休みが大切な時期だ。」と散々念を押されて夏休みを迎えた。
一緒に帰りながら鹿島はこの夏からの生活を案じている。
今まで部活に打ち込んでいたこともあり、自宅で勉強する自信がないらしい。



49: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:43:03.97 ID:mYk8szNr0

「俺は多分自宅で勉強するのは無理だ。」
「そうはいっても勉強せざるを得ない。」
「うん、そうだな。」
「じゃあ頑張れ。」
以下略 AAS



50: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:43:34.85 ID:mYk8szNr0

結局、鹿島は予備校の夏期講習に行くことにしたらしい。
しかし、毎日授業があるわけではなく、自習室の雰囲気に毎日は耐えられないと懇願され、月曜日は大学の図書館で勉強することになった。
一緒に勉強するのは構わないが、鹿島に佐藤さんのことを知られるのが嫌だった。
自分だけずるをしているようで。
以下略 AAS



50Res/33.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice