8:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:30:41.43 ID:JbQZeQhn0
「おう」
いつもの年末、いつもの集合場所で、ジイサンは僕の姿を認めると、嬉しそうに手を上げて笑った。
これに答える代わりに、僕は黙って缶コーヒーを飲み干し、その辺に投げ捨てた。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:31:57.53 ID:JbQZeQhn0
いつの間にか、行きつけの店が潰れていた。
消費税が5%になり、8%になっていた。
僕が最初にやったFFはWだけど、オモテの職場の“同い年の”同僚はスーファミすら知らない。
流行の曲も映画もドラマも、漫画やアニメも何一つ、噛み合う人間が僕の周りにはいない。
それどころか、時代遅れだとバカにされる。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:34:34.76 ID:JbQZeQhn0
「おい知ってるかボウズ」
色気の欠片も無い、野暮ったいデロリアンを運転しながら、ジイサンは藪から棒に話を振った。
「ゆくゆくは、この仕事も全自動化っつーのになるかも知れねぇな。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:35:54.62 ID:JbQZeQhn0
「そうだなぁ」
ご機嫌なトーンを変えずに、ジイサンはハンドルを握りながらウーンと唸っている。
12:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:37:59.67 ID:JbQZeQhn0
「――さぁ。絶滅するってことは無いんじゃない?」
僕は頬杖をつき直して、小さくため息をついた。
何が言いたいんだ、この人は。
13:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:41:06.12 ID:JbQZeQhn0
離職率は高い一方で、新規雇用率はゼロに近かった。
近年では、ツイッターとかインスタグラム?とか、昔と比べて情報発信をする手段が随分増えたという。
たとえ記憶をリセットされても、次の年の瀬に記憶を取り戻した際、これを嬉々として発信する若者は後を絶たないのだ。
14:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:43:46.92 ID:JbQZeQhn0
クソみたいな部屋だった。
スナック菓子の袋や雑誌、ちり紙とカップ麺と、得体の知れないゴミで足の踏み場も無い。
加えて、住人であるその男の、きわめて雑な寝相が、ソイツの人間性を雄弁に物語っていた。
15:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:44:44.95 ID:JbQZeQhn0
――――。
ある種の確信めいた疑念が、ふと思い浮かぶ。
16:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:47:29.46 ID:JbQZeQhn0
――気づくと僕は、見慣れないマンションの一室で目が覚めていた。
金が無いので銀行へ行くが、年始のこの時期は開いておらず、コンビニに行ってみる。
真新しいATMに悪戦苦闘しながら何とか操作を進めると、預金高は見たこともない額に達していた。
17:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:50:03.69 ID:JbQZeQhn0
横浜駅は、未だに工事をしている。
電車のダイヤはいつの間にか改正され、予定した電車の一本後に乗った。
駅を降り、目の前の風景が記憶とまるで違うので、咄嗟に引き返すが、やはり目的の駅だ。
いつまで経ってもなぜか慣れない会社へ行く。
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