1: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:35:13.06 ID:gfGSaD+l0
何処までも対等だと信じていた友達に劣等感を抱き始めたのはいつからだっただろう。
「東京から転校してきた大野けんいちです。」
まだこのこの学校の制服を持っていないという大野の身を包んでいた紺色の制服が、この田舎の中学校には不相応すぎて、変に浮いていたのを覚えている。
大野「杉山!」
杉山「大野!お前なんで…!」
HRが終わってすぐさま、俺の席に駆け寄ってきた大野を見て、椅子がはじけるほど思いっきり席を立ってしまった。
身長も伸びてるし、声変わりもしている。
でも大野は何年越しに見てもやっぱり大野のままで。
変わらない親友の姿を突然目の当たりにして俺は胸が詰まるほど嬉しかった。
大野「俺、この秋からまたこっちの学校通えるようになってさ」
杉山「なんで先に言わねえんだよ!言ってくれれば駅まで迎えに行ったのに!
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2: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:38:34.49 ID:GdHGw1+H0
大野「驚かせたかったんだ、まさか同じクラスになれるとは思ってなかったんだけど」
杉山「めっちゃ驚いたわ!また大野と同じ学校に通えるなんて…」
大野「おいおい、いい年して泣くなよ」
3:名無しNIPPER
2018/08/03(金) 12:40:13.31 ID:GdHGw1+H0
そう大野は何でもないように笑って見せたが、転校生、確実に大野はそれだけじゃなかった。
男の俺からみても大野は男前だ。
髪の毛は真っ黒でサラついてるし、背は高く(同じくらいだけど)スタイルもいい。
転校生というのは、女子の目を嫌味なほど引く大野という男を構成する要素の一因にしかすぎなかった。
4: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:42:58.80 ID:GdHGw1+H0
大野との再会も束の間、夏休みの明けにはすぐに中間テストが待ち受けている。
俺は運動が得意だし好きなのであったが、勉強もわりかし得意であった。
理系科目は他の奴が唸っているところもわりかしすんなりと理解できてたし。
結構点数とれたと思った科目が後日返ってきた個人成績表で学年1位の点数であることを知ることもあった。
大野も頭がいいことは知っていたが、もちろん最初から負けるつもりで勉強するような俺でもなかったし、他の誰でもない、大野には負けたくないという思いで
5: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:45:32.22 ID:GdHGw1+H0
「杉山君はテストどうだった?」
ひょいと隣の席の女子が覗き込んできた。
「ああ…。」
6: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:47:39.32 ID:GdHGw1+H0
「ふふっ。杉山君も大野君にどやされるわよ?」
杉山「そうだな、じゃあ頑張れよ」
「お互いね!」
7: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 12:50:24.87 ID:GdHGw1+H0
気まずげに頭をかいている大野を横目に、部屋の隅に積み重ねってあった雑誌を一冊手に取ってベッドに腰掛けた。
杉山「いいなぁベッド、俺毎日大野の家に泊まりにきちゃおうかな。」
大野「ぜってー来んなよ」
8: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 13:17:03.12 ID:GdHGw1+H0
2学期末に向けてのテスト期間、気がつくと俺は国語の勉強ばっかりするようになっていたと思う。
もちろん他教科もがっつりやったけどどうしても大野の顔が横切るとモチベーションが低下してしまうのだ。
結果、二学期末テスト、俺はまたしても大野に惨敗をした。
しかし、溜息とともに抜け落ちる力でそれをどこか受け入れている自分がいることに気が付いた。
9: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 13:17:58.51 ID:GdHGw1+H0
結局俺は無期限に部活動に参加することを禁じられ、そのまま部を去った。
大野は俺が部活に行かなくなった後を追って驚くぐらい何の躊躇もなく部活を辞めてきた。
大野はあくまでも俺と一緒にいるつもりだった。
俺は大野に何も言わなかった。
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