杉山「大野なんて死ねばいいのに」
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8: ◆wIGwbeMIJg
2018/08/03(金) 13:17:03.12 ID:GdHGw1+H0
2学期末に向けてのテスト期間、気がつくと俺は国語の勉強ばっかりするようになっていたと思う。
もちろん他教科もがっつりやったけどどうしても大野の顔が横切るとモチベーションが低下してしまうのだ。

結果、二学期末テスト、俺はまたしても大野に惨敗をした。
しかし、溜息とともに抜け落ちる力でそれをどこか受け入れている自分がいることに気が付いた。
何処までも負けず嫌いだった頃の自分が怒っているような気がしたが、仕方ないことなのだと、酷く諦めとともに達観していた。

俺は今回も国語でだけ大野よりも高い点数を取ることが出来た。
国語なんてつまらないものだと思っていたのに、俺はこの時から国語がなんだか好きになってしまった。
大野は、このテストでまたしても数学の満点、さらに理科でも満点を記録した。
授業中にふとこぼした理科教師の大野への驚嘆が、前回の時には周囲が気が付かなかった大野の天才性を認知させることになる。

その結果授業後、大野の席の周りに数人の人だかりができ、そいつらは大野に成績表を見せてほしいとしつこくねだった。
はじめは渋っていた大野が根負けし、その華々しい成績が収められた一枚の紙を机の上に取り出すと軽い歓声が上がる。

「凄すぎるよ大野君!」

「うちのテストでこれならどこの高校でも入れるんじゃない?」

「そういえば…杉山君はたしか二位だっけ?」

「二人とも一緒に勉強とかしてるの?」


俺と大野はいつだって一緒だった。
二人で一つみたいな、そんな言葉がまるで似合っていた。
でもこの時無意識に思った。

なんで大野と俺をいちいち比較するんだよ

声にならないようにぐっと奥歯を噛みしめてそのまま自席で寝たふりをしていた。
本当は誰よりも大野と自分を比べていたのは、自分だということをわかっていながら、
俺はクラスメイトへのイラつきを抑えられなかった。


大野が部の選抜チームのメンバーに一年ながら抜擢されたのは、ある寒い日のことだった。。
大野は名前を呼ばれたとき、一瞬で険しい表情を見せたあと、そのまま力強く返事した。

なんで、という思いが強かった。
俺は大野に負けないサッカー選手になりたかった。
勉強で諦めるという道を見出した分、俺には大野に勝つ手段がこれしかなかったというのに。

その時後ろから「杉山は選ばれなかったんだな」というつぶやきが聞こえた。
気が付いたときには酷く腹が立っていて胸倉つかんで引き上げたそいつの頬をぶん殴っていた。

そいつは事実を呟いていただけであって、俺はただの無茶苦茶な八つ当たりをそいつにしてただけに過ぎないことに気が付いたのは、血の気の引いた大野の顔をみた時だった。



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