40: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:08:37.40 ID:bVnO2WFP0
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それは一羽の小鳥にまつわるお話です。
ある所に大きくて立派なお屋敷が一軒。
41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:10:11.98 ID:bVnO2WFP0
そうして長年飼われていた小鳥は、いつからか、
ケージの鍵が外されたままになっていることに気づきました。
それはココではない、別の籠へ、小鳥を誘う為の扉。
42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:13:08.46 ID:bVnO2WFP0
……それでもあの時渡された鍵の重みを、
小鳥はしっかりハッキリと覚えています。
それは心の扉を閉める鍵。
43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:14:01.79 ID:bVnO2WFP0
そうして歌うことの意味を改めて見出したその小鳥は、今はただ、心のままに羽ばたくだけ。
どこへ行っても、どこまで行っても、
"動く止まり木"なんて世にも変わった存在はいつでも彼女のすぐ近くに。
44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:16:05.11 ID:bVnO2WFP0
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だから、私だけを見ていてください。
どうかこの手を繋いで離さないで
45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:17:45.82 ID:bVnO2WFP0
「私は特別なことなんて何もしてません。彼女たちが素直で良い子だから……。
その真っ直ぐな努力が実りをつけた、でしょう?」
「でもそれなら、育てられたのは歌織さんだ。流石、元は歌の先生」
46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:18:36.21 ID:bVnO2WFP0
「どうしたんです? 時間も余りありませんし……」
歩き出さないでいた私のことを、怪訝そうに覗き込む彼。
47: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:20:55.54 ID:bVnO2WFP0
そうして私たちの訪れたスケート場は、ぎこちない恋人ごっこの
デビューステージでありながら、同時にラストステージでもありました。
元々、ロケの予定は一日がかり。
48: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:22:35.86 ID:bVnO2WFP0
「ま、待っててください! 俺も、そちらに行きますから」
一歩、一歩、着実に。
49: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:24:05.29 ID:bVnO2WFP0
「つまり、ナンパをする為にスケート場に? ……呆れた人!」
ハッキリと嫌悪感を表せば、彼は言い訳するように首を振ります。
そうして、慌てながら開いた口からは。
50: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:25:42.45 ID:bVnO2WFP0
――みっともないダンスが終わった時、
私の頭は尻もちをついたような格好でいる彼の胸の上にありました。
そうして強く、強く抱きしめられている上体。
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