50: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:25:42.45 ID:bVnO2WFP0
――みっともないダンスが終わった時、
私の頭は尻もちをついたような格好でいる彼の胸の上にありました。
そうして強く、強く抱きしめられている上体。
肘から先が彼の体に縋りつくように張り付いていて、
固く握りしめていた両手をそっと緩めたなら。
両膝から下が触れている氷の冷たさに触発され、
腕から伝わる熱を無意識のうちに求めている。
……今なら、誰からも咎められない。
「つ、うぅ……!」
そうして、プロデューサーさんが痛みを堪えるように呻いた時です。
私は彼のコートの下にサッと両腕を滑り込ませると、
まるで抱きかかえられた子供のようにその体へとしがみつきました。
ギョッと、彼の目が見開かれます。
私はその様をまじまじ下から見上げながら。
「裕太郎さん」
一切の抑揚を纏わせず、ただ、ポツリと、名前を呼ぶ。
「ごめんなさい。私ったら急に取り乱して」
「いっ、いえ」
「お怪我はありませんか? ……重たいですよね、私」
「そんなこと! そ、そんなことは……」
しどろもどろに答える彼は、周りの視線が気になるみたい。キョロキョロ辺りを見回して。
確かに、他のお客さんたちがジロジロと私達のことを見ていますけど……。
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