49: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/06/15(金) 20:24:05.29 ID:bVnO2WFP0
「つまり、ナンパをする為にスケート場に? ……呆れた人!」
ハッキリと嫌悪感を表せば、彼は言い訳するように首を振ります。
そうして、慌てながら開いた口からは。
「だ、だけど今は、歌織さんと一緒ですから。……勘違いしちゃ困りますよ!」
でもそれは、人の心を逆撫でするには十分すぎる言葉です。
これまでは「大人だもの」と堪えて来た、
彼に対する気持ちを爆発させるに足る程の余計な一言だと言えます!
私は首筋を走る熱さに、氷の上の恐怖も忘れて彼を鋭く睨みつけると。
「勘違いなさってるのはアナタの方じゃありませんか? 確かに私は、
恋人役になって欲しいとは言いましたけど……それで本当の恋人になったワケじゃありませんよ?」
「も、もちろん!」
「だったらどうして、今は歌織が居るから良いだなんて!」
そんなに安い女じゃないと牙の代わりに爪を見せる。
……昔の私ならきっと笑って流せたハズなのに。
どうにもこの人の傍にいると、心は子供っぽくなってしまう。
カッとなって背筋を伸ばしたら、その分手すりから離れた体が即座にバランスを失って――。
「きゃあっ!?」
前屈みに崩れた私のことをプロデューサーさんが抱きとめる。
だけどそれは、彼も手すりから両手を離したということです。
……お互いに支える物も無い体はそのまま冷たいリンクの上へ。
僅かな衝撃が体を抜けて、私達は殺し切れない勢いに任せて氷上をつるつると滑って行く。
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