白菊ほたる『災いの子』
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163: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:34:17.08 ID:1DFdeF0E0
 初めてその少女と出会ったとき、あたしは「おとなしそうな子だな」と思った。
 伏し目がちで口数が少なく、いつもなにかに怯えるみたいにおどおどとしていた。

 13歳、あたしから見ると5つ下、ここはひとつお姉さんがリードしてやらねばなるまい、とガラにもなく張り切って、あれこれと喋りかけたりしたもんだ。

以下略 AAS



164: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:35:22.00 ID:1DFdeF0E0
 2曲目、3曲目、4曲目と、硬派なロックバンドみたいに一切MCを挟まずに歌が続いていく。
 アイドルのライブらしくはない、だけどそれが通用するだけの力がほたるちゃんの歌声にはあった。
 アクシデントに遭うことが多く、オーディション会場にたどり着けないことも珍しくないほたるちゃんは、その実力に対して不当に評価が低い。
 単純な技量で比べるなら、本当は事務所のトップクラスにだってひけをとらない。今まではそれを発揮する機会に恵まれなかっただけだ。

以下略 AAS



165: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:37:09.55 ID:1DFdeF0E0
   *

 隠れていた倉庫から顔を出し、周囲を確認する。
 スタッフの姿、足音、減少。遠くからかすかに音楽と歌声。ライブが再開したらしい。

以下略 AAS



166: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:38:26.55 ID:1DFdeF0E0
 その場を離れ、通路に出る。
 目を閉じ、鼻から大きく息を吸い込む。
 埃の匂い、金属の匂い、コンクリートの匂い、油の匂い、人間の匂い。


以下略 AAS



167: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:39:36.58 ID:1DFdeF0E0
「それを決めたのは、あたしのプロデューサーかにゃ?」

「うん」

 捜索は打ち切るにしても、そのまま行方不明になられると困る。それよりは、ここで夕美ちゃんと合流してくれたほうが後が楽、ということだろう。
以下略 AAS



168: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:41:17.03 ID:1DFdeF0E0
 夕美ちゃんの横に腰かける。
 開いたドアから、かすかに音が届く。夕美ちゃんの曲、ほたるちゃんの歌声。

「聞こえる?」と問いかける。

以下略 AAS



169: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:43:02.72 ID:1DFdeF0E0
「志希ちゃん、懺悔しまーす」

「ざんげ? はい、どうぞ」

「さっきほたるちゃんに、けっこーキツいことを言ってしまいました」
以下略 AAS



170: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:43:50.01 ID:1DFdeF0E0
 夕美ちゃんが苦笑する。

「私には、よくわからないなぁ」

 それはそうだろう。あたし自身にも、なにを言ってるんだかよくわからない。
以下略 AAS



171: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:44:58.11 ID:1DFdeF0E0
   12.

 夕美さんの予定してた曲を終え、3人で歌うはずだったアンコールパートに入っても、志希さんは姿をあらわさなかった。残りのステージは全て、私に任せてくれたということなんだろう。
 不思議と疲労は感じなかった。むしろ歌うほどに体が軽くなっていくようだった。

以下略 AAS



172: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:47:22.28 ID:1DFdeF0E0
 お前は不幸じゃない、とプロデューサーさんは言った。
 その言葉には、嘘がある。

 プロデューサーさんが、以前私が所属していた事務所に妨害行為をおこなったというのは本当なんだろう。それならたしかに、私がクビになったことと、あの事務所が潰れたことは、私の招いた不幸じゃなかったのかもしれない。

以下略 AAS



173: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:48:26.35 ID:1DFdeF0E0
 なんの前触れもなく、ふいに全てのライトが消えた。
 予定の演出じゃない、なんらかの事故があったんだろう。
 客席のほうで、ざわっと狼狽の声が上がりかける。

 ――『なにかあっても止められない限りは続けろ』
以下略 AAS



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