165: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:37:09.55 ID:1DFdeF0E0
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隠れていた倉庫から顔を出し、周囲を確認する。
スタッフの姿、足音、減少。遠くからかすかに音楽と歌声。ライブが再開したらしい。
通路を歩き、スタッフに姿を見せる。困惑の視線、対応に迷っている。堂々と、なに食わぬ顔をして通り過ぎる。呼び止められることはなかった。
プロデューサーたちの話し合いの結果、夕美ちゃんの代わりに出ることになったあたしが行方をくらました。スタッフに捜索するよう指示があった。しかし見つからず、唯一残されたほたるちゃんがステージに上がることになった。捜索は打ち切り、ライブ再開――が今の状況だろう。
外に出てしまおうかとも思ったけど、あたしはステージ衣装のままだ。あまりに目立ちすぎるし、お財布もスマホも持っていない。却下。
舞台袖に移動、プロデューサーが3人、横並びでステージに目を向けている。
左端、自分の担当プロデューサー。さんざんあたしを探し回ったのだろう、疲弊の色が濃い。
中央、ほたるちゃんの担当プロデューサー。あたしの失踪に関わっているとはおくびにも出さない。
右端、夕美ちゃんのプロデューサー。元ヘヴィスモーカー、担当アイドルに言われた「煙草臭い」のひとことで禁煙に成功した男。夕美ちゃんを病院に搬送するなら、間違いなくこの人が付きそう。ここにいるということは病院は後回し。緊急性はないと判断、あるいは夕美ちゃん自身の希望?
しばしプロデューサーたちに並んでステージを眺める。3人はステージに没頭していて、あたしに気付きもしない。目の前を横切っても気付かないかもしれない。
ステージ中央、ほたるちゃんが本能を叫んでいる。
その姿に目を奪われる。立ち尽くす。鼓動が高鳴る。
予定にはなかった夕美ちゃんの楽曲だけど、驚くほどクオリティは高い。お客さんの反応も上々。
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