164: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:35:22.00 ID:1DFdeF0E0
2曲目、3曲目、4曲目と、硬派なロックバンドみたいに一切MCを挟まずに歌が続いていく。
アイドルのライブらしくはない、だけどそれが通用するだけの力がほたるちゃんの歌声にはあった。
アクシデントに遭うことが多く、オーディション会場にたどり着けないことも珍しくないほたるちゃんは、その実力に対して不当に評価が低い。
単純な技量で比べるなら、本当は事務所のトップクラスにだってひけをとらない。今まではそれを発揮する機会に恵まれなかっただけだ。
さっきまでざわざわしていたお客さんはコロッと態度を変えて、曲と曲の間には盛大な歓声と拍手が湧き起こっていた。
いくら夕美ちゃんのファンであっても、夕美ちゃんの曲だというそれだけで大喜びはしない。むしろ出来がよろしくなかったら憤慨していたところだろう。
この喝采は、ほたるちゃんのパフォーマンスが認められた証拠だ。
このライブは複数のビデオカメラで撮影をおこなっていて、後日桜舞姫のライブビデオとして売り出すはずだった。だけど実際には、販売されることはないだろう。
結局のところ、ステージに上がったのはほたるちゃんと志希ちゃんだけ、もはや桜舞姫のライブというには無理がある。
もしもあの姿がたくさんの人の目に触れたら、ほたるちゃんの評価は一変するだろうに、もったいない。
そういった意味では、今日ここにいる5000人のお客さんは、最高にツイてるね。
曲の合間にあたしも立ち上がって、目いっぱいの歓声を送った。ヅラを脱ぎ捨ててしまいたくなったけど、そこはなんとか我慢した。
上手いだけじゃない。いい顔をするようになった。
さっきの、志希ちゃんの前に出てきたときよりも、ずっといい。
ステージの上のほたるちゃんは、とても楽しそうだ。
歌うことが大好きで、踊ることが大好きで、声や動きのひとつひとつから喜びが伝わってきて、なんだか、見ているこっちまで幸せな気分になってくる。
まるで、夕美ちゃんみたいだな。
202Res/248.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20