白菊ほたる『災いの子』
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170: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:43:50.01 ID:1DFdeF0E0
 夕美ちゃんが苦笑する。

「私には、よくわからないなぁ」

 それはそうだろう。あたし自身にも、なにを言ってるんだかよくわからない。

「でも、それならどうして、ほたるちゃんに出番をゆずったの? 本当なら志希ちゃんが出ることになってたんだよね」

「頼まれたから」

「誰に?」

「周子ちゃん」

「なんて?」

「助けてあげてよ、って」

「そっか」

 夕美ちゃんがぽんぽんと自分の太ももを叩く。少し迷ったけど、あたしは体を横に倒し、振動を伝えないよう慎重に、そこに頭を乗せた。
 夕美ちゃんの手が、ゆっくりとあたしの頭をなでる。

「志希ちゃんは、いい子だね」

 思わず、くすりと笑みがこぼれた。
 やれやれまったく、この天才志希ちゃんを、ただの女の子扱いしてくれちゃって。

 夕美ちゃんの膝の上でころんと転がり、真上を向く。微笑をたたえた夕美ちゃんが、あたしを見下ろしている。

「ほたるちゃんね、歌いたいって言ってたよ」

 あたしは言った。

「うん」

「いい匂いがしたよ」

「うん」


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