128: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:54:36.86 ID:AfpWDvGb0
志希さんの準備は手早く、着付けもメイクも5分ほどで終えてきた。
私の出番が終わってからはおよそ20分ほど経っていて、客席はざわつき始めている。
控室を出てステージに向かう志希さんを、遠目から盗み見る。あんなことがあった直後に舞台に上がれるものだろうかと、不安に思った。
129: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:56:12.22 ID:AfpWDvGb0
再びひとりきりになった控室で、私はふらふらと鏡の前に立った。
辛気くさいと、暗いと言われ続けてきた真っ白い顔が、私を見返していた。
なるほど、これは辛気くさいと言われても仕方ない。まるで死人のような顔色だった。
鏡の中の自分が、これは全てお前のせいだと言っているように思えた。
130: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:57:27.06 ID:AfpWDvGb0
それからどのくらい時間が経ったろう。ドアが開かれ、通路の光が薄く差し込んだ。
「あらら大惨事。ほたるちゃん無事?」
志希さんの声だった。ステージが終わったんだろう。
131: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:59:27.81 ID:AfpWDvGb0
「……プロデューサーさん?」
私の声は弱々しく、かすれていた。
「本当だよ」
132: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 19:01:06.81 ID:AfpWDvGb0
私はどうしたい?
私が不幸じゃなかったら、私のせいじゃなかったら?
うまく考えることができなかった。
133: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 19:02:50.70 ID:AfpWDvGb0
意思じゃなく、心がそう言った。
自分でも気付いていない心だった。
不幸のせいじゃなく、贖罪のためじゃなく、ただ私自身が、こんなにもステージに立ちたいと思っていたなんて。
プロデューサーさんが大きくうなずく。
134: ◆ikbHUwR.fw[sage]
2018/06/10(日) 19:03:40.04 ID:AfpWDvGb0
(本日はここまでです)
135:名無しNIPPER[sage]
2018/06/10(日) 19:13:36.76 ID:WI4a1TbZo
乙
プロデューサーの言ってることは本当なんだろうか
136:名無しNIPPER[sage]
2018/06/10(日) 21:45:03.84 ID:vuO0fTZj0
乙です
お話がグッと展開していく瞬間たまらない
137: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:33:24.18 ID:sg2qAd8w0
10.
シンデレラとは成り上がりの物語だ。灰被りからお姫様に。地の底から天国の頂上に。
シャルルペロー、もしくはグリム兄弟のものが有名だが、類似の物語は更に古代、紀元前から存在するともいわれている。
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