132: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 19:01:06.81 ID:AfpWDvGb0
私はどうしたい?
私が不幸じゃなかったら、私のせいじゃなかったら?
うまく考えることができなかった。
だって、私はいつだって不幸だった。いつも周りの人に迷惑をかけていた。
私に選べることなんて、なにもなかった。
何度も頭を下げて、ごめんなさいと繰り返すことしかできなかった。
だから、少しでも償おうと、罪滅ぼしをしたいと、そう願わなきゃいけなかった。
『ほたるちゃんはいつも自分のことは後回しだね』
いつか言われた言葉が脳裏に浮かぶ。たしか夕美さんだ。
夕美さんは少し困ったように、悲しそうにほほ笑んでいた。
『今は不幸とかどうでもええねん! あたしはほたるちゃんの気持ちを訊いてんの!』
これは周子さんの言葉だ。
周子さんはいらだって、怒っているようだった。
私の気持ち。
小学6年生のときの運動会。
みんなが喜んでいた。みんな笑っていた。私は、笑えなかった。
家に帰って、枕に顔を突っ伏して、声を噛み殺して泣いた。
クラスが優勝した喜びよりも、いちばんになれなかった悔しさで。
私は、夕美さんの代わりにステージに立つと言った。
私のせいだから。
私さえいなければ、こんなことにはならなかったから。
じゃあ、私のせいじゃなかったら?
どうやら、志希さんは夕美さんの代わりに出るつもりでいる。
志希さんが出てくれるなら、全ては解決する。
お客さんはきっと喜んでくれる。
みんなが笑ってくれる。
だけど、私は――
「……それでも私は、歌いたい」
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