131: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:59:27.81 ID:AfpWDvGb0
「……プロデューサーさん?」
私の声は弱々しく、かすれていた。
「本当だよ」
とプロデューサーさんが言う。表情は見えなかった。
「346のプロデューサーという立場を利用して、持ちうる限りのコネを使って圧力をかけた。あの事務所に仕事を回さないように。すでに決まっている仕事がご破算になるように。あの事務所が存続できなくなるまで」
「どうして……?」
「白菊を手放させるためだ。向こうからすると、なにがなんだかわからないけど突然仕事がぜんぜん取れなくなったって状況だ。それだけで白菊のせいだと思ってくれる。本当は違うのに。あの日、白菊の同僚アイドルがキャンセルしたことも、俺がそうなるように仕組んだ。スカウトした日、俺があの場にいたのも偶然じゃない。あの頃の白菊の仕事現場にはぜんぶ行っていた。解雇されたばかりの白菊を、その場ですぐにスカウトするために」
頭が混乱して、まるで働いていなかった。
この突然の告白を、どう受け止めていいのかわからない。
「ひどいやつだと思う?」
プロデューサーさんが自嘲するように笑う。
「俺もそう思う。俺の悪意で起こしたことを、わざと白菊のせいだと勘違いさせてたんだから。結局のところ、会社ひとつを潰したわけだ」
「……なんで、そんなことまでして、私を」
「その答えは、前に言った」
わからない。前に? 前って、いつ?
志希さんはいつの間にか私から手を離し、黙ってプロデューサーさんのほうを見つめていた。
「お前は不幸じゃない」
プロデューサーさんがゆっくりと言った。
「事務所が潰れたのも、そこの社員たちが路頭に迷ったのも、相葉さんのケガも、お前のせいじゃない。なんの責任も、罪滅ぼしの必要もない」
それから少しの間を置いて、プロデューサーさんが私に問いかけた。
「……だったら、白菊はどうしたい?」
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