白菊ほたる『災いの子』
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137: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:33:24.18 ID:sg2qAd8w0
   10.

 シンデレラとは成り上がりの物語だ。灰被りからお姫様に。地の底から天国の頂上に。

 シャルルペロー、もしくはグリム兄弟のものが有名だが、類似の物語は更に古代、紀元前から存在するともいわれている。
 つまり、ある程度『定型』となっているストーリーを、数多の文学者が自己流にアレンジするという文化があった。その中で、たまたま広く世に受け入れられ、語り継がれたものが、今の誰もが知っているシンデレラになったということだ。
 だからシンデレラの物語には、古今東西、星の数ほどのバージョン違いがある。現代でも日を追うごとに増えていっているのかもしれない。

 幼き頃の俺が偶然目にしたものも、そのひとつだ。その物語では、『シンデレラは長い時間をかけ、綿密に練り上げた計画をもって王妃の座を射止めた』という内容になっていた。
 カボチャの馬車も魔法のドレスも登場しない。この話に『魔法』はなく、それに当たるものは、シンデレラの境遇に同情した使用人であり、シンデレラが姉や母からうまいことくすねた装飾品であり、内に秘めた、野心と知恵だった。
 この話が好きだった。魔法などという子供だましのうさんくさいものではなく、確かな人間の力を持って成り上がるというところが、当時の俺の琴線に触れた。

 いつ、どこでそれを読んだのかは覚えていない。探してみようにも手掛かりのひとつもなく、年月を重ねるにつれて徐々に記憶は薄れていった。
 それでも、アイドルのプロデューサーという職を志した理由に、幼心に深く刻みつけられた、この物語があったのは間違いない。


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